08





 素っ裸の身体から祭りの香りはとっくに消え去り、今は彼自身の匂いしかしない。
 汗と整髪料と、彼の肌の匂い。

……興奮、した。
 煮えるような熱い血が頭と下半身に勢いよく流れこんで、発情期の獣みたいに息が荒くなる。

「……ねえ、お願い……。挿れたい、ナカに、これ……っ」

「っな、なすりつけんなって……ッ」

「まだ? ね、まだ、だめなの? いつならいい? もっと我慢しなきゃいけない……?」

「……っひさ、し……」

 俺はもう本能むき出しで、鼻息荒く父の尻の谷間に自分のそれを擦りつけ、腰をゆるゆると振る。

 身体の感覚は研ぎ澄まされていくのに、どんどん思考がぼやけていく。
 ふわふわ、する。早く触れたい、隙間もないくらいに。
 彼に包まれたい。父さんに、受け入れてほしい。

「じゃあ……、キスは? それならいい……? ね、舌、舌だして、舐めたい」

「っ、ん、んんぁ……ッ」

 低く囁いて、耳の裏に唇を押し当てる。
 そこで思いっきり呼吸する俺に、彼は首を振って拒否する素振りをした。
 だけど、そのときに何か言おうと顔の距離が近いまま俺のほうを向き、たまたま口を開いたせいで、タイミング良く呼吸が重なって。
 そのまま、流れるように唇に食らいつく。

「んぁっ、あぅ……ッうぅ、ひさし、んぐぅ……っ」

 話したいがために動く舌を捕らえて、絡めて、吸いつく。
 ぬるぬるのそれが気持ちよくて、歯列をなぞって、舌同士を擦りあわせる。
 彼の口端から垂れた唾液を舐めて、それを自分の舌で掬って絡めながら濃厚なキスを繰り返して、没頭した。

 熱い。うめき声の振動さえ、気持ちいい。
 もっと、したい。
 もっと、もっとほしい。

 尻の谷間をぐりぐりと抉る俺の自身は、ドクドクと脈を感じるほど硬くなっていて、先走りが彼の尻を濡らす。
 もうだめ、勃起しすぎて痛い。

「っは……、ぁ、父さ……ッ」

「……っひさし、いい、もういい……っ」

 初めてだった。
 痛いくらいに昂るのも、勝手に呼吸が荒くなるのも。
 身体は熱がこもる一方で、自分で自分が制御できない。
 触れた粘膜に、彼のしっとりとした素肌に、媚薬でも混ざっているみたいだと思った。

 全身の肌が、火傷したように過敏になっている。
 こんな状態で、あんなにむくむく淫靡に動くところに挿れたら、どうなるんだろう。

「やだ、おねがい……っ、まだ……? ねえっ、まだ、おあずけ……?」

「ちがっ、も、もう、挿れて……っ、いい、からぁ……ッ!」

──その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。

 頭に血がのぼって、こめかみがズキズキする。
 口内は俺と彼の唾液でぬるぬるなのに、荒く浅い呼吸のせいで喉だけが乾いて張りつく。
 ごくりと唾を飲みこんで、自分の唇を舐めた。

 まるで獲物を逃がすまいとする野獣のように、俺は彼の身体にぴたりと覆い被さり、双丘を開いて。
 手で位置を探り、今にも破裂しそうなガチガチの自身を、一番窪んだそこに突き挿れた。

「っん、んぅ゙ッ、……ん、ンぅゔ……ッは、ぁ、あっ、ぁあッ……ンァっ、あッ! んァあ゙……っ! 」

 ずぶずぶと自身の半分ほどまで一気に入ったけど、それ以上はまだ厳しい。
 それなのに、俺はナカが馴染むのも待っていられず、一心不乱に腰を打ちつけ始める。

 出し入れするときの、ぬちぬち鳴る音が卑猥で、裏返った声がいやらしくて、鼓膜からも彼の色香が侵食していく。

 もっとゆっくりしないとだめなのに、分かっているのに、腰、とまんない。

「……っは、ぁ……っごめ、父さん、ごめ、気持ち、よすぎて……っ!」

「っんぐ、うぅ……ッいい、いいからっ、ひさし、寿……っ!」

 自分の上体を起こして、彼の尻を掴んで腰だけを動かすと、最初は半分までしか入らなかったそれが、狭い肉をかき分けて、いつしか根元までみっちりと入るようになっていた。

 彼の背中は律動の衝撃に耐えるように強張っているのに、ナカはうねうねと蠢いて、熱くて柔らかい襞が俺のモノを絞りとるように収縮して。

「……っふ、ぁ、すご……っ、何これ……溶けそう」

「っひァ、あっ、ぁあッ、ひさし、ひさしぃ……ッ!」

 後ろから腰を掴んで問答無用でがっつく俺の手に、揺れながらこちらを振り向く彼の手が重なる。

「ん、ごめ……先に一回、イっていい……? そしたら多分、おさまる、から……ッ」

「あっ、んぅっ、イって……っ、ひさし、イって……っ、好きに、していい……ッんぁあ……?!」

「っ、ちょっと、あんま煽んないで……っ」

 ずくずくと痛いくらいに張りつめる自身に眉根を寄せて、後ろから彼の背中を抱きしめる。
 いや……、抱きしめるなんて可愛いもんじゃないかも。

 本能的に逃げまどう腰を引っ掴んで、力ずくで上からのし掛かって。
 遠慮も気遣いもなく、獰猛に腰を振るう。

「あっ、ぁ、あっ、ア、んぁっ、ん、んぅ……っ!」

「うぁ、父さん……っ、」

 俺の腰と彼の双丘が当たるたびに、ぱちゅぱちゅと卑猥な水音が部屋に響く。

 健康的な丸いお尻はむっちりとした重量感さえあって、激しくぶつかるたびに破裂音とともに形を変え、ぶるぶる揺れる。
 そんな、ただでさえ視覚的にそそられるのに、ずっと焦がれていたそこに、今は自分のモノがぬるぬると出入りしているんだ。

 感極まりすぎて、頭の血管がぶち切れそうだった。
 腰が甘だるく疼き、電気のようなものがびりびりと背骨を走り、突き動かされる。
 俺は自分の絶頂に向かって腰を振るい、彼の前立腺をエラの張った亀頭で擦りあげ、最奥を一気に穿つ。

「うァっ、ぁあ……っ、んぁっあ……っ激し、!」

「……っ、は、ぁ……ごめ、もう少し、我慢して……っ」

「ひぃ……ぅ、そこ、ひさし、ひさしっ、アッ、それ、アっ、ひぁ、ァあ……んっ!」

「ん……っ、これ? ここ、イイ……? 気持ちい、の……?」

 乱れる呼吸の合間に発した自分の声は、一瞬本当に自分が喋ったのかと疑うほど舌足らずで、情欲に支配されているせいか、吐息混じりで低くて甘ったるい。
 同時に彼のナカがきゅんと締まり、思わず喉奥でうめいた。

 腹に力を入れて、奥歯を噛んで。
 どろどろにわだかまった熱が出口を求めて、身体中を暴れまわっているような感覚に襲われる。

 下腹部から背中にかけて、焼けた芯が突き抜けたような愉悦にぞわりと身震いするが、何とか耐え忍ぶ。

「っや、ば……。イきそうだった、今の」

「ッひ、ぁ、イけよ……ッ、も、我慢すんなって……っ」

「ふは、なんか……、勿体なくなっちゃって」

「はあっ? も、おれ……っ、きつ、ぃ」

「……あ、そっか、そうだよね。じゃあちょっと動く……から、痛いときは言ってね」

 後ろから囁いて、彼の跳ねる肩に軽いキスをして。
 動きやすい体勢に変えるために身動ぎすると、ぐんっ、とふいに奥を突いてしまった。

 嬌声を迸らせて背筋を伸ばす彼の反応に、深く腰を突きいれたまま、奥ばかりをぬちぬちと責め立てる。

「あっ、ァ、ぁあ……んっ、や、それ……っ、ぃやだって……っ」

「気持ちよくない……?」

「っあぅ……ッ、ァあっ、あンっ、んぅ……ッ声、出る、からぁ……っ」

 気持ちよくないわけでは、ないってこと?
 俺自身を柔らかくきゅうきゅう包むナカはどんどん具合が良くなってきていて、解れた内壁はとろっとろで。

 初めて見た彼の痴態に俺も興奮しっぱなしで、そろそろ限界かも。
 ていうか、迫りあがる射精感が強すぎて、とりあえず一回イっておかないと、本当に彼のことを壊してしまいそうだ。

「は……、父さ、ごめん、頭さげて、お尻あげられる……?」

「……っ、」

「ん、そう……。ちょっと、ガンガン動いちゃうと思うけど……」





- 10 -

[*前へ] [#次へ]

戻る
リゼ