言の葉




心の臓。
なんか素敵な言葉だなって思った。今日国語の授業て聞いて、心にクるものがあった


「心の臓だって。何か素敵」
「お前そういう昔の言葉好きだな」


そう言われてそうかもと思った。うん、確かに昔の言葉は綺麗なものがあると思う。


「でさあ」
「うん」
「授業つまらない」

ふうーっと溜息をついて、ノートを取る右手の動きを止める。こんな風に黒板を書き写してるだけで、何の意味があるのだか。人間そろばんと漢字の読み書きができれば生きていけんのよ、昔の人だってそうだったじゃない

「サボりてーってか?」
「いや、さぼるのもつまらない」

意味が分からないと言った顔をした十夜。どうせ外に行ってもかんかん照りで暑いし、やりたいことなんて限られてるし。夏って不便ね

「じゃあどうしてーの」

十夜に私の声は届いているんだろうけど、それほど気にしてない様子。だってノート取るのに夢中だもんね、仕方ない

「ここでずっと十夜の顔、眺めてたいの」

あ。流石に反応してくれた。嬉しくなってふふふと笑うと、心底気持ち悪いといった様子の十夜。

「お前気持ち悪さに磨きかかってねえ」

ひとつ大きな溜息をついてまたノートに移る十夜。悔しいことこの上ありゃしない。私が隣にいるんだから私を見てよ!

「なんとでも言いなさいよ。あたしはここで見てるから、」

そう言ってじっと十夜の顔を見つめていると、さっきからチラチラを視線をこっちに寄越してくる。意識してくれ、ていうかさせた

「見てるだけで満足か」
「え?」

頭をわしわしと掻いて、それからシャーペンを置いた十夜。そしてくるりと私の方に身体を向けると、

「接吻でもしてやろーか」

せ、っぷん。どこかで聴いた言葉。なんだったっけなあ、多分昔の言葉だった気がする。言ってきた十夜の顔は何故か真っ赤で

「ごめん、せっぷんってなに」

はあ、とまた溜息。

「じゃあ、異性交遊!」

半ば諦めた感がありつつ十夜がそう言った。けれども悲しいかな、これまたわたしの知らない言葉だった

「いせいこうゆう」


つまりどういう意味?と問いかけてしまったわたしは大馬鹿もの、貴方に沢山恥をかかせてしまったようです




言の葉
(昔の言葉が好きだって、言ってたからさ)
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