007
今日は珍しくポニーテールにしてみた。いつも髪は下ろしてるけど今日はあまりに寝癖が酷かったもので苦し紛れに結んでみた。(朝早く起きれて時間があまってっていうのもある)
「おはよー、巧」
「おー、久しぶりに早起きなこった」
「昨日12時に寝たしね」
正確には早起きとは言えない。もう8時半過ぎ、校門はとっくのとうに閉まっている。普通の「早起き」とはワケが違うのだ
巧の自転車の後ろに乗るとポニーテールがふわふわ揺れてちょっとくすぐったかった。…あ、ポニーテール
「巧」
「ん」
「何かないの?」
「何がだよ」
「だから何か…」
「何かってなんだよ」
「…これだから巧はモテないんだよ」
「んだとテメッ」
どうやら巧は気づかなかったらしい。本当にポニーテールなんて一ヶ月ぶりくらいだよ、いっつも私髪下ろしてたよ、巧は毎日見てるよね、毎日会ってるよね、私と
なんで気づかないの?ありえなくない?なくなくない?
そのまま何事もなく自転車は学校に到着。自転車小屋で再度ポニーテールについてほのめかす発言をしてみたが巧は全く気づかない。私の顔もしっかり見てるのに気づかない。もしやこいつもともと目が見えてないんじゃないかと疑う程に、だ
「本当にわかんないの!?」
もう一度、ダメ押しでそう言うと巧は顔をゆがめた。
「何がだよ!?さっきからお前なんなの!?そんなに俺の気が引きたいの!?」
「そんなんじゃねーよ馬鹿!」
こんなに言っても気づかないなんて、相当重症だと思う
もしかしてわざとか?私を馬鹿にしてるのか?
こんなに気づいてほしがってる私を見てお前は心の中でほくそ笑んでるのか!なんて奴だ、幼馴染がそんな鬼畜だと知らなかった
学校に着いて、教室に入って一番。
「あ、莉子、今日ポニテー」
女友達は皆私のポニテに気づいてくれた。それが普通だと思ってるのは私だけ?
「んふ、今日時間余っちゃって」
「嘘つけー。もう登校時間過ぎてるくせに」
「えへ?」
「キモい」
久々に会話したと思ったらこんなあしらわれ方…まあ私のキャラなんだからしょうがないか
一会話終えて、巧と司が話しているのを見つけ、そこにつかつかと歩いて行く。
「あ、おはよう莉子」
「おはよう司君」
「今日はポニーテールか」
「ん、似合う?」
そう言いながら巧ににっこりと笑いかけると、ひきつった表情で「あ、ああ〜、そうそう、今日ポニーテールちゃんだったなァ」と言う巧。
その表情で本当に気づいてなかったんだ、と確信した
「これだから女子にモテないんだよ」
「おま、それ朝も言っただろ」
「本当のことなんでー」
3限が終わり、ちょっとお前プリント取りに来いとセンコーに言われてしまった私はわざわざ教務室まで足を運んだ。次の授業の時に持って来てくれりゃいいくせに、あほ
「これ、お前提出期限過ぎてるし丸付けしてないじゃん」
「あ…すいません///」
「なんで照れてんの?」
先生からプリントを受け取って、溜息。
評価ボロボロすぎるなあ…もうちょっとちゃんとしないと
「おい、ポニーテール」
そう後ろで呼ばれた気がして振り返った。
瞬間、頭に重み。ふさ、と音を立てて肩についた髪。
「なっ…」
一瞬の隙に私のポニーテールがいつものミディアムに元通りした。
「こーすりゃいいって事だろ」
にやりと笑って、私のヘアゴムを腕に通す、奴。
巧だった。
「せっかく時間かけて結んだのに、ほんとむかつく」
「お前に言われたくねえわ」
返してと言っても返さないので腕にはめたゴムを思いっきり引っ張って離してやったら、巧はしばらく痛いと言っていた。ざまーみろ
窓から見えた空が、やけに青かった
気がした。
意地悪
(嫌いじゃない)
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