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4話目くらいになって私の名前を言うのもどうかと思うが、私の名前は莉子である。今時「子」なんて珍しいと思うけど親がそう付けたのだからしょうがない

だけど、やっぱり自分の名前を間違えられるというのは嫌なものだ


佐助が私の頭を撫でたすぐあと、私は漫画を手にとってそいつの頭に叩きつけてきた。驚いた奴の声の声がしたのと私が屋上のドアを閉めたのは同時で、別に怒られるのが怖くて帰ってきたんじゃないけど、なんとなく走って教室まで戻った。



が、既に授業の途中、すいませんでしたあとアホ面を下げて教室に入るわけにもいかず。適当にそのへんをうろうろして、ケータイいじって、時間を潰した。

(ったくただでさえ成績悪いのに授業のサボりなんて余計に内申下がるじゃない!まあ大学行く気なんてないからいいんだけど、そういえば2限てなんだったっけ、あ、わかった国語だ。あの先生声小さいし気も弱いから授業中寝てられるのになぁ、残念、それならいっそ保健室行って寝てこようか?なんて理由つけよう。昨日寝不足だったんです、彼氏が寝かせてくれませんでした…///なーんて下品だし理由になってないか。ああつくづく思うけど私って馬鹿だなあ。一人でどんだけ会話してるのよ、もう、そもそもなんでここにいるんだっけ)




「わっ」
「うあっ」

突然、背後の教室の扉が開く。扉によりかかっていた私の身体はそのまま後ろに倒れた。頭ぶつけて痛い。多少驚いたけど目を開くとそこにいた相手が相手だったので溜息が出た

「…司」
「ずっとここにいたのか。授業終わったぞ」
「知ってる、つーか授業終わるの待ってた」
「ったく…で、佐助はどうした」
「相変わらず死ねばいいって思った」
「ああ、屋上で昼寝してたと?」
「うん」

ぶつぶつと脳内で会話を繰り広げていたらもう3限だと。笑わせる、あたしが一人になったって1時間は優に過ぎていくってことじゃないの?

立ち上がって教室内を見回すと、もう既に人影はまばら。残っていたのは、私と司と数人…あれ、巧がいない

「巧はトイレ」
「あ…そう」

何も言ってないのに、もしかしてこいつ私の頭の中が読めるのか

「お前の考えてる事くらいわかる」

あっ。また読まれてる。やばいよこの人宇宙人じゃね?



次の授業は体育。私の一番嫌いとする科目。ああおなか痛い。そうだ保健室に行こう

「先生保健室行ってきます」
「お前またか!今年入って体育やったの3回だけだぞ。それもマット運動のみ」
「だってマットなんてくるくる回ってりゃいいだけじゃないっすか。つーことで」

後ろで女子が「また莉子保健室だって」「ホントサボり常習犯だよねー」「体育できなさすぎて笑われるのが嫌なんじゃないの?」なーんてぶつぶつ言っていたが、それ全部当てはまっているんだからしょうがない。
跳び箱も、長距離も短距離も、立ち幅跳びも、球技も、何も自分はできないのだ。やればできるなんて言ってる熱血もいるが、跳び箱の7段を飛ぼうとしたとき下半身全てを跳び箱にぶつけた私はどうなるんだ。小学校の時から跳び箱やってるんだぞ、やればできるんだろ、ものすごくやってるけどできねーぞバカヤロー


「すつれいしゃーす」

ガラリと保健室の扉を開けると白衣ではない先生がいた。保健室の先生=白衣なんて漫画の中の話じゃねーの

「体育の時間なの、先生」
「いい加減授業出なさい」
「嫌です、私の汚点をどうして人様に晒さなくてはならないんですか」
「誰だって苦手なことはあるでしょ」
「苦手じゃないんです出来ないんです!私にとって体育は大勢が見てる中で口から汚物吐き出せって強要されてるみたいなものなんです…うっ」
「あー、はいはい、もういいから寝ろ」
「先生ありがとー大好き」

つくづく先生が女でよかったなと思う。色々と女の理由つけて休ませてもらえるからだ
今日はただ体育が嫌だからなんだけど


保健室の一番左端のベッドに寝っ転がって、布団をかける。ちょっと冷たくて気持ちいい。


5分くらいして、扉が開く音がした。そろそろ眠れそうだったのに誰だよとりあえず帰れ

「せんせー、体育なんすけど」



そこに来たのは佐助だった




死ねばいいのに
(考えてることまるでおんなじ)
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