※4※
あっという間に衣服を剥ぎ取られ、下着だけの姿になる。なんとかしなければと思うが、どうしていいかわからない。
隙をついてベッドから離れ、逃げられる場所を探した。けれど、密室のここにそんな場所はない。

「陽。やだ、こんなのヤダ……」

じりじりとにじり寄る相手に訴える。
怖くて苦しくて、じわりと涙が滲んだ。
そんな瑠衣の様子を、陽介は冷酷な瞳で嗤っている。この状況を楽しんでいるのだ。
なにか、違和感を感じる。
距離を置いてみて気付いた。彼の雰囲気が徐々に変わっている気がする。
陽介だが、……陽介ではないような。

「お前、……だれ?」

声が震えた。
その言葉を聞いた彼は表情を消していく。瑠衣に興味が無くなったように背中を向けた。
戸棚を開けたりクローゼットを開けたりと部屋を物色し始めた。
瑠衣から関心が移ったようだ。
その間に剥ぎ取られた衣服を集めていく。
なんとかしてここから逃げなければ。
ベッドの上で背中を向けている彼に気付かれないように、そろりそろりと足音を消して出入り口に移動する。
ゆっくりとドアノブに手を掛けるが、ビクともしない。鍵が掛かっているのだ。
頑丈すぎる造りに閉じ込められた。彼はこれを知って瑠衣を自由にさせていたのだろう。

「そうだ、蒼」

駅で蒼に連絡するように陽介が言っていた。
ポケットから携帯電話を取り出して蒼のアドレスを探している途中で、後ろから伸びてきた手に奪われた。

「っ、……」

思わず小さな悲鳴が漏れた。
気配もなく背後に立つ男が自分を見下ろしている。
鋭い眼光は見慣れたものではなかった。
だれ……。
声に乗らない言葉が空気となって吐き出される。

「いっ、た……痛いっ!離せっ」

骨が折れそうなほどの力で手首を握られ、再び部屋の奥に連行される。
乱暴にベッドに投げられ、ふかふかのそれが衝撃を吸収してくれた。

「陽を、……陽介をどこにやった」

目の前の彼は陽介ではない。ならば、本物はきっとどこかに居るはず。
瑠衣はそう考えた。
この状況なら、蒼を呼ぶより陽介を呼んだほうがいいかもしれない。

「俺はここに居るだろ」

ここに来て初めて会話をした。
駅での彼とは纏う雰囲気が違う。

「違う。お前じゃない」

はぁ、とわざとらしい溜め息を吐く。
陽介ではないと頭に言い聞かせても、姿形は彼
なので罪悪感を感じてしまう。
奪い取った瑠衣の携帯電話を操作し、ある画面を見せた。
『村雨陽介』と書かれた発信画面。
通話ボタンを押し、しばらくすると着信音が聞こえた。
目の前の男は、自分の上着のポケットから携帯電話を取り出して画面を瑠衣に見せる。

「え、……?」

『茅野瑠衣』と書かれた着信画面。
紛れもなく、それは陽介の携帯電話だ。
陽介の持ち物を奪って成り済ましている?
陽介の携帯電話に細工をしている?
いろいろな可能性を頭のなかで考える。しかし、それがなんの意味を成すのかがわからない。

「だから言っただろ、俺はここに居るって」

「ち、がう……。だって、陽は……」

二つの携帯電話をぽいっと投げ、茫然としている瑠衣に近付く。
ずるずると後退するが、すぐに逃げ場がなくなった。
瑠衣の横の壁に両手をついて怯える彼を閉じ込める。
逃げ道はないと言われているようだった。

「だ、から……芦屋を呼べって、言っただろ……」

苦しそうな声が耳元で聞こえた。
はっと目を見開き、ゆっくりと顔を見てみる。

「よ、ぅ……?」

「あぁ。……くっそ、中のコイツ、押さえ込んでるうちに、……逃げろ」

「だ、って……開かない」

「壁にあるので、清算すれば……出れる」

「待って、陽は?どうすんの?」

「なんとか、する。だから、行け」

「う、ん……」

ここに残しておくのは不安だが、自分が居てはいけないのだと思う。
急いで陽介の腕から逃げ、投げられた携帯電話を拾いドアへ向かう。
陽介の言った通り、壁になにかがある。操作の仕方なんてよくわからないけれど、やるしかない。
ポチポチとボタンを押していると襟首を捕まれ後ろに引っ張られた。バランスを崩した瑠衣は文字通り引き摺られる。首が絞まって苦しい。

「ったく、ペラペラ喋りやがって。まぁいい、やることは変わんねぇんだ」

ベッドまで連れていく必要はないと適当な場所で手を離し、床に転がした。
瑠衣の両手首にオモチャの手錠をかける。しかし、所詮オモチャ。瑠衣の力でも簡単に壊すことができる。

「お前の力、少しもらうぞ」

「あっ……、」

くらりと軽い目眩がした。
力を持っていかれた時の感覚だ。
この男は、自分の意思で力を持っていくことができるのか。正直、驚いた。
今まで自分と相手の意思に関係なく、瑠衣の力は持っていかれていたのだから。
オモチャの手錠は、頑丈な金属に変わっていた。
確か、陽介の力は物の大きさを変えるもの。素材の変化はなかったはず。

「コイツの力は便利だな」

にやりと不気味に笑う男。
同じ顔、同じ声のはずなのに、別人に見えるのは中にいる奴の印象なのだろう。
再び衣服を剥ぎ取られる。先ほどよりも乱暴なそれに、逃げなければと瑠衣は懸命に力を入れる。
動く度にジャラジャラという金属音が冷たい感触とともに動きを鈍らせる。

「体は同じなんだ、逃げんなよ」

「や、っめ……やだ、痛……、」

準備もされていない秘孔に指を無理矢理押し込んでくる。
痛みや苦しみしかないその行為に体が拒み、指を押し返す。

「痛ぃっ!やめ、……あぁぁっ、はな、しっっっ」

周りを押し広げながら指を埋めていく。
気持ち悪い。痛い。苦しい。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
ジタバタと暴れると頭や尻を叩かれた。それが新たな痛みとなって恐怖に繋がる。
恐い。怖い。コワイ。
ガタガタと体が震え、涙が溢れてきた。なにも出来ない自分が情けない。

「いいね、そういう反応、スキだよ」

『すき』
同じ言葉なのに、嬉しくない。

「こんくらいでいっか」

ぐりぐりと弄くり回していた指を引き抜き、男のソレを取り出した。
何度も見たことがあるのに、今はそれがとても恐ろしい。
震える体で床を這う。
逃げなきゃ。

「逃げんなって。こっからが楽しいんだから」

服を引っ張って腰を引き寄せる。
硬くなったソレを擦り付けてくるが、瑠衣には恐怖しかない。
迎える準備も心もないそこは、侵入を拒んでいる。
それでも男は構わずにソレを捩じ込む。ズブズブと肉を割るように瑠衣の体に埋めていった。

「ーーーーッッッッッ、、!!!!」

あまりの痛みに喉が引きつり声が出ない。
呼吸も忘れるくらいの衝撃に目の奥でチカチカと光りが弾ける。

「っっぃ、ああああっっっ!」

悲鳴に似た叫び声をあげながら頭や四肢を振り乱す。
ツーッと水が流れる。おそらく、血だろう。
それが潤滑油代わりとなり、男の動きがスムーズになった。
指では届かなかった繊細な場所を刺激していく。

「あっ、あぁっ、やぁ、っったす、け……」

「ほら、いい声で鳴けよ。ヨウスケくんも見てるぜ」

「っ!?よ、う……?あんっっ、」

「くくっ、絞まりが良くなったぜ。見られるのが嬉しいのか?」

「は、っあぁ……ち、がうっっっ」

男は瑠衣の腰を両手で掴んで持ち上げる。先ほどよりも深く深く貫き、スピードを速めた。

「あっ、んぅ、やめっ、……んぁぁぁあああ、」

パンパンッと肌がぶつかる音と振動が体に響く。
しばらくすると、悲鳴の中に嬌声が混ざり始める。いつの間にか瑠衣の中心が僅かに反応を示していた。
それを男がぐっと握り込む。

「や、だ……さわんなぁっ……あっ、あんぅぅっ、うぅうぅ……」

上下に扱かれたそれは、痛みを感じるのに快楽へと変わってしまう。
二つ同時に刺激を与えられ、頭に靄がかかっていく。

「だめっ、はな、っせぇぇ、……ダメダメダメッッッ」

やがて、波が押し寄せる。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
生理現象だとしても、他の男の手で果てるなんて。
ぶんぶんと頭を振り乱し、逃げようとすると頭を叩かれた。尻を叩かれた。そして、ピストン運動が速められる。

「う″ぁぁあああ″あ″あ″っっ、う″っぅぅ……」

悲鳴をあげながら白濁の液を吐き出した。ガクガクと体を小刻みに震わせる。
男が自分のモノを引き抜くと支えることもできず床に体を投げ出した。
体を震わせたまま、懸命に酸素を肺に取り込んでいる。



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