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「ほら、何色がいい?」

好きな色選んでいいよ、と繋いでいた手を離すと、やったぁ!と言って駆け出して行った。
景吾と二人で、それを見つめた。


「あたし達の時は赤と黒しかなかったのにね。」

最近は凄い。
七色どころか、十数種類もの色のランドセルがグラデーションとなって並んでいる。



「あぁん?俺はダークブルーだったぜ。」
「‥そりゃ高級感溢れることで。」


聞いた私が間違ってた。
この人は時代の一歩も二歩も先を行く人でした。



「あっ!やだ、転んだ〜」

はしゃいでランドセルを選んでいた息子が覚束ない自分の足取りに躓き、前のめりに転び、私は慌てて、駆け寄ろうとした。



「おい、放っておけよ。」
「駄目だよ。」

何言ってるの、と子供をあやすような目で景吾を諭す。



「あれくらいで誰かに頼らせるな。」

そう言いながら我が子を見つめている景吾見て、私は絶句した。

自分のことばっかり考えてる俺様だったのに、いつの間にか、父親になっていた。



「おら、行くぞ。」

そう言って、私達がさっきまで息子と繋いでいた手を繋いだ。



「好き。」

募った想いが、溢れ出た。



「ヘラヘラしてはぐれんなよ。」
「子供じゃないんだから大丈夫だよ。」

そう言って、未だに何色にするか迷っている息子の元へ行った。


今まで、息子が二人いる感覚だったのに。
ふいを突かれた父親の顔に、久しぶりに胸がぎゅう、となる新鮮な感じがした。



「決まった?」
「まだ。」

「どれで迷ってるんだよ。」
「うんとねー‥これと、これと‥これとこれ!」

「随分迷ってるねー」
「だっていっぱいあるんだもんっ。」

繋いだ手をそのままに、しゃがんで息子の頭をぽんぽんと撫でると、ぷぅ、と頬を膨らませて口を尖らせている。
こっちはまだまだ子供だな、と思っていると、景吾が言う。
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