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[81] 生還B
By 猪熊
11/11/27 23:44
階段の下にへたりこんで何台かのタクシーを見送った。
気力のない手を上げてもほとんどのタクシーは一瞥もしないで通り過ぎていく。
何時間たったのだろう…
気を抜くと再び眠りそうだった。
数十年前、インドのガンジス河の畔のカートで死を待っている人々を見た記憶…
経験した事のない痛みと状況の中[諦め]と[覚悟]が交互に心を過っていく。

目の前に緑色のタクシーが止まった。
隣のアパートに住んでいる中国人の女性だった。
目があった瞬間[ぎょっ]した表情で私を見た。
振り絞る声で[タクシーに乗せてくれ]ってもう一度同じ様に[タクシーに…]
私の表情から尋常ではない事を察してくれたのだろう
帰りかけようとするタクシーを彼女は強引に止めてくれた。
頭からタクシーに乗り込んで病院の名前を告げた。
運転手は怪訝な顔で…そう。恐らく酔っ払いの類いだと思ったのだろう…
『お客さん、ちゃんと乗って下さい』みたいな感じで露骨に嫌な顔していた。
『脳梗塞だ。早く病院に連れていってくれ、早くしないとここで死ぬぞ…』
運転手さんにして見ればえらい迷惑だっただろう。
明らかに狼狽しながら自分の携帯で病院に連絡してくれた…
救急病院に横付けされた時にはタンカと車椅子が用意されていた。
タクシーから降りれなくて運転手が肩を貸してくれた。
『お客さん、頑張って下さい。もう大丈夫ですから…』
人の情けが身にしみた…
タンカの上で運転手の名前を聞いた。
運転手は答えなかった。
せめて出身は…
懐かしい街の名前だった…
私の生まれた街の隣街たった
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