タイトル:
お名前:
メールアドレス:
ホームページ:
本文:
階段の下にへたりこんで何台かのタクシーを見送った。 気力のない手を上げてもほとんどのタクシーは一瞥もしないで通り過ぎていく。 何時間たったのだろう… 気を抜くと再び眠りそうだった。 数十年前、インドのガンジス河の畔のカートで死を待っている人々を見た記憶… 経験した事のない痛みと状況の中[諦め]と[覚悟]が交互に心を過っていく。 目の前に緑色のタクシーが止まった。 隣のアパートに住んでいる中国人の女性だった。 目があった瞬間[ぎょっ]した表情で私を見た。 振り絞る声で[タクシーに乗せてくれ]ってもう一度同じ様に[タクシーに…] 私の表情から尋常ではない事を察してくれたのだろう 帰りかけようとするタクシーを彼女は強引に止めてくれた。 頭からタクシーに乗り込んで病院の名前を告げた。 運転手は怪訝な顔で…そう。恐らく酔っ払いの類いだと思ったのだろう… 『お客さん、ちゃんと乗って下さい』みたいな感じで露骨に嫌な顔していた。 『脳梗塞だ。早く病院に連れていってくれ、早くしないとここで死ぬぞ…』 運転手さ
んにして見ればえらい迷惑だっただろう。 明らかに狼狽しながら自分の携帯で病院に連絡してくれた… 救急病院に横付けされた時にはタンカと車椅子が用意されていた。 タクシーから降りれなくて運転手が肩を貸してくれた。 『お客さん、頑張って下さい。もう大丈夫ですから…』 人の情けが身にしみた… タンカの上で運転手の名前を聞いた。 運転手は答えなかった。 せめて出身は… 懐かしい街の名前だった… 私の生まれた街の隣街たった
編集パス(必須):
画像ファイル:
※著作権/肖像権に触れる画像、違法アダルト画像等のアップロードは禁止です。
戻る
リゼ