うたかたの。【6】
シンは、萃華に「私も何か調べてみます」と告げ、
また来ます。と言って、自分の星へ帰っていった。
仕事の続きをするため、部屋へ戻ったゴワス。
一人残された萃華は、ゴワスに教えてもらった書庫へ向かい、先ほどシンから聞いた第7宇宙の地球について調べる事にした。
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「うわ、・・・本が沢山・・・。」
書庫には山のように本が積まれていて、中には、神様でないと開ける事が出来ない鍵のかかった本などもあった。
本の探し方を教わったといえど、こんな大量の本の中、目的の本を見つけるのは骨が折れる・・・。
「・・・どこかな・・・。」
色んな場所を行ったり来たりして、一生懸命探すが、見つからない・・・。
「・・・探すのも下手くそだなんて・・・、私は本当に何も出来ないのね・・・」
自分の不甲斐無さに肩をおとしつつ、また探し出そうと本棚を見つめたとき、書庫の扉が開く音がした。
誰か入ってきた、と思い、扉の方を見ると、
(ざ、ザマス様っ!)
最近自分が怒らせてばかりいるザマスの姿があり、咄嗟に身を隠す萃華。
(また、私が要らない事をして、ザマス様を怒らせてしまうかも知れない・・・。ううう、仲良くなるって意気込んだばかりなのに・・・、私の意気地なし!・・・でも、今の私じゃ、ザマス様の負担でしかない・・・。)
先ほどの、ティーカップを割り、怒られた事を思い出し、力なく肩を落とす萃華。
書庫の奥でザマスに見つからないように足を抱えて縮こまって座り、曲げている膝に額を押し付ける。
(ザマス様は、どんな本を読むんだろう・・・?)
床を踏みしめるザマスの足音が聞こえるたびに、ドキドキしてしまう。
それは、見つかってしまうかもしれないというスリル感からか、
また怒られてしまうかもしれないという恐怖感からか・・・、
・・・それとも、
(・・・ザマス様は・・・どんな事に興味を示すんだろう・・・?・・・どんな人を・・・好きになるんだろう・・・?)
だんだんと思考が甘い方向へ向かってしまう自分が恥ずかしくなって、更に顔を埋めた。
(・・・だめ、今私、きっと顔が真っ赤だわ・・・。)
意識すればするほど、顔の熱は上がる一方で・・・
(私、どうしてこんなにも、ザマス様のことが気になるんだろう・・・)
両手を頬に添え、熱を冷ますように顔を包む。
平静を取り戻すように、静かに深呼吸する。
すると、ザマスの足音がピタリと止んだ。
・・・かと思えば、だんだんと萃華の方へ足音が近付いてきて・・・、
「先ほどから、何をしているんだ。」
「えっ!?」
振り返ると、そこには
何冊かの分厚い本を抱えて、首を傾げているザマスの姿があった。
「あっ・・、えっと、」
「私が気付いていないとでも思ったのか?」
「っ!!」
それは紛れも無く、ザマスの笑顔だった・・・。
得意げに笑うザマスは、まるでかくれんぼで隠れた友達を見つけ出した鬼のように、無邪気で・・・
(ザマス様も、こんな風に笑ったりするんだ・・・)
自分に笑顔を向けてくれた事の嬉しさと、ザマスの新たな一面を知る事ができた嬉しさが混ざり合って、自然と笑顔になる萃華。
「何を笑っている?」
「え、えと・・、えへへ、何ででしょう?・・・なんだか、嬉しくて・・・」
「・・・?変なやつだ。」
呆れたように眉をハの字に曲げるザマス。
「書庫に居たという事は、何か探していたのだろう?見つかったのか?」
「あ、実は、全然見つからなくて・・・、」
「何を探しているんだ?」
「・・・え?」
気の抜けた声を上げる萃華に、ザマスは怪訝な顔をする。
「本を探しているのだろう?お前一人だと、きっと一生見つからん。」
「探してくださるのですか・・・?」
「そう言っている。」
「っ!!」
居心地悪そうに視線を外すザマスに、萃華は嬉しいような困ったような表情でお礼を言った。
「あ、ありがとうございます。・・・ザマス様の仕事、また増やしてしまって、ごめんなさい・・・。」
「・・・。このくらい、仕事のうちには入らない。」
顔は見えないけれど、ザマスが少し照れているのが分かった。
(耳、真っ赤だ。)
ザマスの新しい一面を見つけるたび、嬉しくなる萃華。
少しずつ、彼に近付いている気がして・・・
(・・・もっと、近付きたいなあ・・・。)
そんな事を願いながら、萃華はザマスと書庫を回るのだった。
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