うたかたの。【5】
萃華が、ザマスとの距離を縮めようと決意してからというもの、
彼女は毎日のように、お茶を淹れる練習や身の回りの雑務をこなしていた。
少しでも認めてもらえるように・・・
少しでも視界に入れてもらえるように・・・
少しでも・・好きになってもらえるように・・・
・・・なのに、
「私の周りをうろつくな。そして仕事を増やすな。」
「ご、ごめんなさい、ザマス様・・・」
ちょくちょく失敗してザマスを怒らせてしまう萃華。
(不器用なのだろうか・・・、私・・・)
萃華は、割ってしまったティーカップを片付ける。
(・・・綺麗なティーカップだったのに・・・、ごめんなさい・・・。)
割れてしまったティーカップには、かわいいお花が描かれていた。
割ってしまった事を悔やむように、萃華は描かれている花を指で撫でた。
「・・・ごめんね、お花さん。」
独り言のようにそう呟き、割れたティーカップの欠片を集める萃華を、ザマスは静かに見つめていた。
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萃華は、割れたティーカップの欠片を持って、ゴワスに謝りに行こうと中庭へ向かう。
扉を開け外に出ると、そこにはゴワスと、もう一人見知らぬ神様の姿があった。
(・・?ザマス様やゴワス様と似たような風格の方だな・・・。)
萃華はその人と目が合い、慌てたように一礼した。
それに気がついたゴワスは、振り返り、萃華に手招きをする。
「萃華、こちらへ来て、お前も挨拶しなさい。」
「はい、ゴワス様。」
萃華はゴワスが座っている椅子の隣に立ち、もう一度一礼した。
「初めまして、萃華と申します。」
彼は柔らかく微笑み、萃華と同じように一礼した。
「ゴワス様から、貴方の話を聞いていたんですよ。私は、第7宇宙の界王神です。シンとお呼びください。」
「シン様・・・。」
よろしくお願いします。と萃華はシンと握手を交わした。
そして、頭に浮かんだ疑問をゴワスに問う。
「ゴワス様、「第7宇宙」とは何ですか?」
「おお、まだ話していなかったか。」
ゴワスはすまんすまんと頭を掻き、「お前も椅子に座りなさい」と萃華を隣に座らせた。
「よいか?萃華。私たちが居るここは、「第10宇宙」の界王神界だ。そして、宇宙は、第1宇宙から第12宇宙まで存在しておる。」
「・・宇宙・・・ですか。」
「然様。萃華には少し難しい話かも知れんな。」
ゴワスは、はははと笑い萃華の頭を撫でる。
そして、その様子を見ていたシンが考えるような仕草をしてこう言った。
「萃華さんは、生前の記憶は愚か、自分の名前以外全て忘れてしまったのですよね?」
シンの問いかけに、コクリと頷く萃華。
「私が居る第7宇宙の地球と言う星には、貴方と同じ風貌をした人間が沢山暮らしています。もしかすると、貴方の記憶の手掛かりになるかもしれませんよ。」
そう言いながら、シンは水晶玉を取り出し、話に出た第7宇宙の地球に住む人間の様子を見せてくれた。
「ほう。確かに、萃華の風貌は、この星の者に近しい。お前は、地球人で間違いないだろう。」
「ちきゅう、じん。」
食い入るように、水晶玉を見つめる萃華。
水晶玉には、幸せそうに笑う、人々の姿が映されている。
「・・・・何か、思い出せそうですか?」
シンが萃華の顔を見つめてそう問うと、萃華は眉間にしわを寄せた。
「・・・・。」
何か引っかかるような、思い出せそうな、変な感覚が萃華を襲い、とても歯がゆくなる。
「萃華、焦る事はない。シンさんが良い手掛かりを持ってきてくださったのだ。ゆっくり思い出していくとしようではないか。」
ゴワスの言葉に、萃華は困ったように笑い、頷いた。
そして、「あ、」と思い出したように声を上げ、持っていたティーカップの欠片をゴワスに見せる。
「ゴワス様、ごめんなさい。私の不注意で、大事なティーカップが割れてしまいました・・・。」
しょんぼりする萃華をゴワスは優しく撫でた。
「良い良い。失敗は誰にでも起こりうる事。大事なのは、失敗した事を無かった事にせず、きちんと告白できる素直さと・・・」
ゴワスは萃華の手を握って、優しく微笑んだ。
「・・・お前が怪我をしなかったかという事じゃ。」
「ゴワス様・・・。」
「手を切ってはいないか?次からは、気をつけて扱うのだぞ?割れ物は凶器にも成り得る。」
優しくも真剣なまなざしでそう忠告するゴワスに、萃華は「はい」と笑顔で頷いた。
その様子を見ていたシンは、その暖かな会話に、静かに笑みを浮かべるのだった・・・。
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