うたかたの。【3】




眠りから覚めた萃華は、まず最初に目の前に飛び込んできた人物に心臓が破裂しそうになった。



(ざ、ザマス様が、なんでこんなところに!!?)



自分が眠っていた岩の傍に背をもたれさせ、読書中だったのか、手に難しそうな本を持ったまま、無防備にもすやすやと寝息をたてていた。



(も、もしかして、ここってザマス様の特等席だったとか!!?・・・どど、どうしよう・・・、ますます嫌われちゃうよ・・・)


いや、もうこの上無いほど嫌われてるじゃん、と自分にツッコミをいれ、萃華はザマスを起こさないようにそっとその場を離れようとした。

その時、何かがバサっと音をたてて地面に落ちた。



(これ・・・、毛布?)



萃華はそれを拾い上げ、首を傾げた。


・・・ひょっとして、



(ザマス様が、かけてくださったのかな・・・?)


些細な期待が頭を過ぎり、萃華は嬉しくなって笑みを浮かべた。


そして、地面に落ちてしまった毛布の土を綺麗にはらい、今度は萃華が、ザマスに毛布をかけ、その場を後にした。




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建物に戻ってみると、ゴワスが萃華に向かって手を振っているのが見え、萃華は「ゴワス様〜!」と手を振り替えし、その場に降り立った。



「どこへ行っておったのだ?ザマスと一緒ではないのか?」



「ザマス様は、お疲れのご様子で、木の下で眠っていらっしゃいました。」



「ほう、」



ゴワスは何やら考える仕草をした後、何かに感づいたようににこりと微笑んだ。



「そうかそうか、ザマスの奴はまったくしょうがないな。」



「・・・??」



何だか一人で納得してしまっているゴワスを見て、萃華は首を傾げる。



「まあ、気にするな。こっちの話というやつだ。」とゴワスは笑った。




「さあ、こちらに来なさい、萃華。少し確認したい事がある。」



ゴワスは萃華の背に手を伸ばし、案内するようにその背を押した。


・・・その手は、しっかりと萃華の背に触れられた。



それを確認したゴワスは「・・・ふむ」と難しい顔をしつつも、すぐに笑顔に戻り、萃華を部屋の中へ誘導した。



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その頃、木の下で目を覚ましたザマスが、自分にかけられている毛布を見て唖然としていた。


(この毛布は、あの者にかけたはず・・・)



確認しようとして振り返るが、そこに萃華の姿は無かった。

そして全てを悟ったザマス。



「・・・余計な事を・・・」


憎まれ口を叩きながらも、ザマスの表情は優しかった。

温かい毛布を綺麗にたたみ、ザマスはゆっくりと建物へ向かって歩き出した。


その間、萃華のために毛布を取りに行った際、ゴワスと交わした会話を思い出していた。




・・・・・・・・。



『・・・触れられない?』



『ええ。界王神見習いではありますが、私とて神。死者である彼女に触れることは可能なはずです。しかし、』



『・・・お前の手は、萃華の体をすり抜けたのか・・・』



『はい。』



うーん、と考え込むゴワス。



『・・・しかし、彼女の体を心配するとは、どういう風の吹き回しだね?ザマス。』



『し、心配などでは・・・、私は単純に、あの者が体調を崩せばゴワス様や私の負担になると考えたうえで・・・』



『はっはっは!分かった分かった。』



『・・・。』



軽快に笑った後、また表情を元に戻すゴワス。



『私も、それについて、調べてみよう。ザマスはその調子で、彼女についてゆっくり知っていきなさい。触れられずとも、会話は出来る。そうであろう?』



『はい、ゴワス様・・・。』



・・・・・・・・。






ザマスはゴワスとの会話を思い返し、空を見上げた。



そして、まだぬくもりが残る毛布を握り、ザマスは足早に建物へと戻っていくのだった・・・。


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