うたかたの。【1】
ゴワスに建物の中を案内されて、嬉しそうにその後を着いて行く萃華。
記憶が無い萃華にとっては、何もかもが新鮮で、はじめて見る物だらけだった。
その後ろを、未だに憎悪溢れた表情でついて歩いているザマスは、はあ、と大きなため息をついた。
そしてゴワスは「ここを好きに使うといい。」とある部屋を萃華のためにと用意してくれた。
その言葉に、ザマスは「ゴワス様っ!」と慌てたように横は入りした。
「この者を私の部屋の隣に住まわせるというのですかっ!?」
「何か問題が?」
「・・・・・。」
とてつもなく嫌そうな顔をするザマス。
萃華は何だか申し訳なくなってしまい、ザマスから少し距離をとった。
「ザマス様は・・・、本当に人間がお嫌いなのですね。」
寂しそうに言う萃華を見て、ゴワスはザマスを叱ろうとするが、「良いんです。」と萃華がそれを制止した。
「私は貴方がたの世界にお邪魔している身の上です。お部屋を用意していただけるのはありがたいですが、ザマス様の気を害してしまうのは、私の本意ではありません。」
「しかし・・・」
萃華は首を振り、更に続けた。
「まだ実感はありませんが、私は死んでいるのですよね?でしたら、睡眠も食事も必要ありません。この世界に居させていただくだけでも、充分です。親切にありがとうございます、ゴワス様。」
彼女の言葉に、ふむ・・と渋い顔をするゴワス。
ザマスは、人間が自分の部屋から離れてくれるという事実に安堵しつつも、何だか居たたまれない気持ちになった。
(私は神だ。人間が神である私に気を遣い、苦な選択をするのは当然なのだ・・・。)
自分に言い聞かせるようにそう心で唱え、ザマスはゴワスに「お茶の用意をしてまいります」と一礼し、その場を離れた。
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「すまないな、萃華」
二人だけになった時、ゴワスはふいに萃華に謝罪した。
何の事か分からなかった萃華は首を傾げる。
「ザマスは、本当はとても心穏やかで優しい奴なのだ。」
ゴワスの言葉に、ふふ、と笑って萃華は答える。
「分かっています。お気になさらないで、ゴワス様。」
そう言って萃華は、ビュンと空に舞い上がり、遠くを見つめて口を開いた。
「ザマス様が、あれほど嫌悪するのです・・・。私たち人間は、神様たちにとって、それほど愚かで醜く見える生き物だったのでしょうね・・・。」
悲しいです。と笑顔でそう言う萃華の表情は切なげで、ゴワスも黙り込んでしまう。
そして、影からそれを聞いていたザマスも、萃華の言葉を聞いて俯いた。
(何故だ。あの人間が言っている事は当たり前の事だ。人間とは愚かで醜い生き物・・・。・・・なのに何故、あの人間からその言葉を聞くと、胸が締め付けられる・・・?)
ザマスは言いようの無い心苦しさに胸を押さえた。
・・・・この感情は、彼女がここへやって来た意味と何か関係があるのだろうか・・・?
それは、まだ誰にも分からない・・・。
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