止められない歯車
あの子とあって以来俺はモヤモヤしている。理由はわかり切って居る。会いたいんだ………だが俺は忍者になる者だ、三禁を破る訳にはいかない
頭では分かっていても心が追いつかなくてため息が出てしまう。
文次朗「………」
好いた人は今までに何人もいた、初恋も済ませている。だが三禁があるとバリアを貼り心の中で恋い焦がれるだけで付き合ったりはしなかった。今まではそれで我慢出来ていたからそれでいいんだと思っていた。
だが今回は何故だ?何故こんなにも言う事聞かないのだろうか?会いたいと声を聞きたいと触れられたいとたった数時間過ごしただけなのに、会わないと決めれば決める程会いたいと思ってしまう………
文次朗「くそっ」
伊作「文次朗どうかしたの?」
文次朗「いや………」
伊作「文次朗最近ため息ばかりついているけどどうかしたの?」
文次朗「何でもない」
伊作「そう?悩み事があるなら言ってね、溜め込むのは良くないから」
文次朗「伊作は……恋をした時どうする?」
思わず口に出してしまった。
伊作「へ……!?」
文次朗「あ、いや何でもない忘れてくれ」
何でこんな事言ったんだろうか?思わず恥ずかしくなり俺は体を反対に向け立ち去ろうとした
伊作「ぼっ僕は好きな子が出来たら告白するよ!」
文次朗「………俺たちは忍者だぞ、三禁はどうする」
背を向けたまま、文次朗は絞り出す様に言った。
伊作「三禁ねえ……確かに忍者になる為には守らなければいけない事だと思うけど僕はそれだけが全てじゃないと思うんだ」
文次朗「どういう事だ?」
伊作「誰かを好きになって、その誰かを守るために強くなる事だってあると思うんだ」
文次朗「お前の言いたい事は分かる………その誰かが同業者により傷つけられたらどうするんだ?」
ギラギラとした目が伊作を射抜く、それでも伊作は怯まず真っ直ぐ文次朗に向かってこう言った。
伊作「させない、そんな事絶対にさせないよ」
いつもは何処か抜けていて頼りなさそうに見える伊作が自信たっぷりに言い切るものだから、思わず息を飲んだ。
文次朗「………っ」
伊作「そうやって言い聞かせなければいけない程大切なんだね」
文次朗「なっ!?」
伊作「好きなんでしょう?誰かが」
伊作は文次朗の反応を見ると微笑ましそうに笑った。呆れた様なでも嬉しそうな……
伊作「僕はね、文次朗が誰かを好きになってくれて良かったと思っているよ」
文次朗「何をっ……//」
伊作「だって文次朗に新しい感情ができるわけでしょう?それってとてもいい事だよ」
文次朗「恥かしい事ばっか言うんじゃねえ!//」
伊作「ふふ、ごめんごめん。文次朗が相談してくれたのが嬉しくって」
文次朗「相談なんかしてねえ………っ//」
伊作「うん分かってる」
ニコニコしながら真っ赤な顔をした俺を見る伊作、絶対に分かってねえな………くそっやっぱり言うんじゃなかった
伊作「また話聞かせてよねー」
文次朗「うるせえっ//」
ドカドカと足音を立てて走って行く、いつもは廊下は走るなだとか言ってる立場だがそんな事関係ねえ!嗚呼もうスッキリしたじゃねえか!
今度会ったら!今度会ったら名前を聞こう!それで話をするんだ……
文次朗「今度の休み……会いに行ってみるか」
空を見上げてポツリと呟けば、あの子の照れた様な嬉しそうな顔が浮かんできて………早く休みぬんねかな
それまで鍛錬だ!もっと強くならないとな、やる事は一つきちんと授業を受けいつも通りにこなしギンギンに鍛錬する事だ
文次朗「ギンギンに鍛錬だー!!」
気合をいれて裏山までひとっ走り、仙蔵になんだこいつ見たいな顔をされたがそんなの無視だ。
今の俺は最高に機嫌がいいからな
伊作「ふふ、今日は特に元気だなー」
留三郎「元気過ぎてうるせえよ」
伊作「いいじゃないか」
なんだかこっちまで嬉しくってニコニコしていたら留さんになんだ?って聞かれたけどまだ内緒!
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