お会いしたのです

椛「桜っ…桜ー!」

いくら声を掛けても桜からの応答がない。嗚呼この日ほど役に立たない目が忌まわしく感じた事などない。

今日は桜に誘われ山に花を詰みに来ていた。桜がたくさん花が咲いている所を見つけたから私と一緒に行きたいというので一緒にきたらはぐれてしまった

桜の見つけた場所で話をしながら花をつんでいるといつの間にか桜の声がしなくなり、目の見えない私は手探りでなんとか前に進みながらあちらこちらを探した。

椛「桜何処にいるのっ……桜っ」

外にあまりで無い私は体力があまり無い、ぜえぜえいいながら桜を探した。それでも桜からの応答はなくて私はどうしたらいいのかわからなくて14にもなるのに。目に巻いてある包帯にシミを作ってしまった。

椛「桜お願い出てきてっ桜ぁ……」

しゃがみんこんで情けない声をだすと、反対側からガサガサと音がした

椛「さっ桜!?」

「あー悪い俺は桜とやらではない………」

桜の可愛いらしい声の代わりに威厳のある男の人の声がした重く深いような重低音とでもいうのだろうか?

男の人が得意じゃない私は思わず体を揺らした

椛「あ、えっと……」

「すまない、驚かせるつもりじゃなかったんだが……」

男の人は私の反応を見てだろうか?謝ってきた

椛「すっすいません……その、えっと」

「とっ取り敢えず何もしないから落ち着け」

椛「はっはい」

男の人はそう言うと私に近寄り頭を撫でた。ゴツゴツとした手が私の頭の上を滑る。触れられた時にまた体がビクッとなってしまったけど、この人の撫で方はとても落ち着くもので私は思わず頭を預けてしまった。

「落ち着いたか?」

椛「はっはい//」

初対面でしかも顔も見えないのに頭を預けてしまった恥ずかしさで私は顔が熱くなった。

「どうかしたのか?桜だったか?名前を呼んでいたが」

男の人は私の顔に巻いてある包帯を見ても何も言わなかった。普通に話しかけられたのはいつぶりだろうか……

椛「…実は、妹の桜とお花をつみに来たのですがはぐれてしまって……」

「そうか……この辺は山賊が出ると聞いた事もないし攫われてはいないだろう」

椛「探しても私の目では見つけられなくて………」

「俺が一緒に探すから安心しろ」

椛「でっでも迷惑では……」

「余計な心配はするな、たまたま暇だからな手伝ってやる」

椛「ありがとうございますっ助かります…とても」

「気にするな」

そう言うと私の手を掴んで立たせた。

「妹の特徴は?」

椛「えっと………年は四歳で髪は肩くらいまでで…今日は確か桃色の小袖を着ているはずです」

「そうか、分かった」

男の人は私の手を掴み歩きはじめた。時より前に石があるとか段差があるとか教えてくれながら男の人の導くままに歩いた。

不思議と不安はなかった、何故だろうか?男の人は何故だか苦手で今までこんなに安心出来た事はないのに………つながれている手が少し熱い気がした。

「あっちの方に人の気配がする」

椛「気配………ですか?」

視力を失うと気配に敏感になるだとか色々言われているけど私は全く敏感にならなかった。その代わり手先は器用になったけど

「この先だ、1人でいるからもしかしたら妹かもしれんな」

椛「桜っ」

桜かもしれないしそうじゃないかもしれない。頭では分かっているけど何故か私には桜だと思った。

桜「あれー?姉様その人だあれ?」

椛「っ桜!!」

桜の声を聞いて安心した私は思わず声を荒げた。

桜「ねっ姉様怒ってるの?」

滅多に桜に怒る事のない私にびっくりしている桜。怒りたい訳ではないけど感情がこんがらがって声を荒げる事しか出来なかった。

椛「あれだけ私のそばから離れてはいけないといったでしょう!?」

桜「ねえ、姉様ごめんなさっ怒らないでえっ」

今にも泣き出しそうな声をしている桜、泣きたいのはこっちだ。

椛「私がどれだけ心配したとっ目の見えない私はっまともに、桜を探す事など出来ないのよっ!?」

姉として凛していたいと思っていても私の涙は止まってくれなさそうです。

桜「姉様ごめんなさっごめんなさい………」

桜はそんな私を見て抱きついて許しを乞うた。顔から出るものすべてをだしているに違いない桜は泣くといつもそう。

椛「桜………お願いよ…私は見えないの何処へも行くななんて言わないから、側にいるか声をかけるかしなさい………」

桜「はい……姉様ごめんなさい…」

椛「桜………良かった。はっあの!」

私は当たりを見渡して男の人を探した。

「なんだ?」

椛「桜を探してくれてありがとうございました!」

「ああ気にするな」

椛「本当になんと言ったらいいのか……」

「いいんだよ、それより良かったな妹見つけられて」

椛「はいっ」

桜「私桜だよ!お兄ちゃんは桜を探してくれたの?」

「桜かいい名前だな。そうだあまり姉ちゃんを困らすなよ」

桜「はーい!お兄ちゃんありがとう姉様と探してくれて」

「おう、帰りはちゃんと帰れるか?」

桜「うん!大丈夫だよ!」

椛「本当にありがとうございました……もし宜しければお名前を聞いてもよろしいですか?」

「名前か?」

椛「はい、貴方のお名前を」

私はこの人の名前を知りたくなった。とても強く優しい人の名前を

「……潮江、潮江文次朗だ」

椛「潮江……文次朗さん」

桜「文兄だね!」

文次朗「斬新な呼び方だな」

椛「文次朗さん桜の事ありがとうございました」

文次朗「いいってそこまでの事してないんだか気にするな」

桜「あ!大変父様は今日帰りが早いんだよ!」

椛「そうだった!大変帰らなきゃ」

文次朗「気をつけて帰れよ」

椛「はい!」

桜「ばいばーい文兄!」

桜に手を引かれて小走りで帰った。私は少し後ろ髪を引かれながら…文次朗さんとても素敵な人でした。

家に帰ると父様も母様もいて少し怒られてしまった。これ以上怒られては桜が可哀想なので父様には迷子になった事を内緒にした。

もう一度お会いしたいな……でもあんな素敵な方にはいい人がいるんだろうな……

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