感情が入り混じる

文次郎「椛…もう外は暗い」

椛「っもうそんな時間なんですね…///」

夕餉を食べ終わった後文次郎さんはまだする事があると部屋を後にしたのです。そして就寝前に文次郎さんが部屋にやってきたのでした。昨日とは違う部屋に文次郎さんと二人きり…いつも二人きりなのになぜか今日はとてもドキドキしてしまいます…

文次郎「…」

椛「なぜだか今日は少しドキドキしています///」

文次郎「そう緊張することもないだろう…俺と椛しかいないのだから」

ふっと優しく微笑む文次郎さんは私の横に座ったのでした。そうして優しく私のペースで包帯を外すことを促したのです。

文次郎「ゆっくり椛のペースでしていけばいい」

椛「はい…ありがとうございます」

そして私はゆっくりと包帯を外し一息をついて目を開けるのでした。

文次郎「…どう…だ…?」

椛「今日も昨日と変わりません…もやっとしたようなものが見えるくらいで…」

文次郎「そうか」

良かった、昨日のは勘違いではなかったのだと。何年も目をつむったまま過ごしていたんだそう簡単に見える様にはならないだろうと思ってるからな…

椛「昨日と変わらないなんて…」

文次郎「どうした?」

椛「本当に見えるようになるのか不安になってしまいました…」

文次郎「そうか、だが昨日と変わらないというのは良かったんじゃないか?昨日の見えるようになったというのが勘違いではなかったという事なんだから」

椛「…はい」

文次郎「それにゆっくりでいいんだ」

椛「なぜ…でしょうか?」

文次郎「そう簡単に俺の顔が見えるようになっても面白くあるまい」

少し意地悪に行った文次郎さん…それでも私が不安に感じていることを怖く思っていることをわかってくれててそっと手を握ってくれた

椛「…私はすぐにでも見えるようになりたいです」

文次郎「そうか…いつでも椛が望むのなら俺の顔くらい見せてやるさ。だからそれまではゆっくり時間をかけろ」

椛「少し…焦りすぎていたようです」

文次郎「ゆっくりでいいんだ…早く見えてしまえばこの時が終わってしまうだろう?」

椛「ゆっくり…私は…そうですね」

この時が終わる、そう確かに私が見えるようになればこの学園から出ていくことは当たり前の事。まだ先の事を想像して少しさみしくなった。この学園を出て行ったら文次郎さんとは会えなく…なるのだろうか

文次郎「ゆっくりだ…」

ゆっくりゆっくり、できるならずっとこの時が止まればいいと思ってしまうほどに俺は椛を離したくなくってる…柄にもないこんな事思うなんて
椛が俺の顔を見たときになんて言うのだろうか…

椛「文次郎さん…」

寂しさから名前を呼ぶ椛、それに答えるように手をきゅっと握る文次郎
なぜでしょうか、いつもであればそれだけで私の心が満たされるのに今日は寂しい…

文次郎「…椛、俺は椛が何を思っているのか分からん」

椛「はい…?」

文次郎「俺は結構鈍感らしい…」

椛「そう、なんですね?」

突拍子もなく文次郎さんはそう言った。私は文次郎さんの考えていることがよく分かりません…いつも私を満たしたり、私がほしがる言葉をくれるのにどうして私にそうも優しくしてくれるのか分からないから…

文次郎「だから、椛が今何故そう気を落としているのか分からない」

椛「っえっと…」

文次郎「ここに来た時に言った言葉を覚えているか」

椛「ええ…」

文次郎「困ったことがあれば俺が解決してやると言ったことを」

椛「はい、ちゃんと覚えております」

文次郎「俺には言えない事か…?」

私の肩を抱き寄せ文次郎さんは少し切なそうな声で言った。私をどうしたいのだろう…こんなにも私に入ってくる文次郎さん。私が寂しくなるのは、悲しくなるのは、嬉しくなるのは…文次郎さんによってなのに

椛「文次郎さんは…」

文次郎「ああ…」

椛「私が…」

好きなんですか?なんて自意識過剰になってしまうほどに優しくしないでください…もっともっと好きになってしまったらどうするんですか?
私が…好きと伝えたら…なんと答えるのですか…?怖くて聞けるわけがない…

椛「私が、見えるようになって学園を去ったら…少しは寂しいですか?」

文次郎「そうだな。毎回休みの日に会いに行ってしまう程寂しいだろうな」

椛「…ふふっ」

文次郎「可笑しいものか…俺は冗談は言わない方だ」

真剣な声で呟く…少し強く私の事を抱きしめる方息ができなくなる。少し息を吸い込めば文次郎さんの香りがして、ねえ文次郎さん…私も冗談なんて言わないんです。

椛「私は…雨が降ってしまう程寂しく思います…///」

文次郎「っ…///」

思わず息をのんだ。ちらりとのぞく耳が赤らんでいて…俺は勘違いをしてしまいそうだ。
こんなにも椛の事を好きだなんて椛は知らないだろうよ

椛が俺を選んでくれたなら俺は、3禁など容易く破ってみせるさ、お前を守って生きていきたい。そばに…居て欲しいんだ。

ただ…それまでは…ゆっくり俺に思いを告げる為に時間をくれないか。椛との時間をくれないか

文次郎「それなら俺に今この時の時間をくれないか…」

椛「時間を…ですか?」

文次郎「時間をくれ、俺はそうしてでも傍に居たい」

椛「っはい…///」

私の時間ならいつでも。いつまでも差し上げるのに…文次郎さんは、本当に何を考えているのだろう。それでもさっきまでの不安はどこかに行ってしまったのだから私は現金な人間だ

そっと、文次郎さんの胸に頭を預けてみる。ごつごつとした手が私の頭をなでる。いつまでもこうしていたい

そして文次郎さんが部屋に帰るとき月明かりに照らされて少し顔が見えたように見えたのは…気のせいだったのか
あまりにも鮮明に見えたものだから、優しく微笑んでいる文次郎さんの笑顔は私がそうあってほしいと願った願望だったのだろうか

好きです。ただただ…それだけ

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