夜の輝きを再び

夜の保健室で2日目の診察が始まりました。
新野先生と善法寺さん、そしてまた文次郎さんが付き添って下さっています。とても心強く感じます。

新野「さあ、今日も気軽にリハビリしましょうね」

新野先生が明るくおっしゃいます。寝る前のリハビリだから申し訳なく思ってしまいますが、優しい先生で頼もしく感じます。

伊作「そうそう、椛ちゃんの場合緊張しすぎているからね」

椛「はっはい!」

文次郎「そんなに緊張することもないだろう、昨日と同じことをすればいいだけだ」

椛「そう、ですよね」

ふうっと息を吐き包帯をほどいていく。
するすると包帯をほどくと善法寺さんが包帯を受け取ってくれました。

新野「ゆっくり目を開けてください。」

椛「はい」

新野「昨日とは何か違いますか?」

椛「そう…ですね」

昨日とは違いなんだか人の影?とでもいうのでしょうか?モヤモヤしたものが動いているかのような、何かが見えています。

新野「何が違いますか?」

椛「なんだか少し人影…?誰ががいるようなものが見えます」

伊作「凄いっ見えてる!」

私、見えているんだ…なんだかびっくりしています。あまりにも嬉しくて言葉にならなくて他人事のようになってしまっています。

文次郎「…本当か!?」

椛「はい…ぼやあっと新野先生と善法寺さん?目の前にいらっしゃる…?ように見えてる気がします」

伊作「凄いっ本当に凄いっ見えてるよ!文次郎よかった!椛ちゃんよかったね!!」

椛「あっありがとうございます」

文次郎「あっああ…」

新野「こらこら伊作君落ち着いて。よかったですね、今はずっと目を閉じていたからぼやっと見える位ですが目が慣れたらちゃんと見えるようになりますよ」

椛「はい、なんだか実感があまりないですが…私本当に見えるようになるんですね…」

嬉しい、嬉しい。私本当に見えるようになるんだ…文次郎さん、私は貴方に会えてどれだけのものを与えて貰ったんでしょう

椛「本当に…嬉しいです」

言葉にならないくらい本当は感動してる…だけれどそれをどうやって表現していいのか全く分からないからありきたりな言葉でしか表現してしまう。文次郎さんが隣で良かったなと小さく呟いた、それだけで体の奥からぶわっと温かい何かが私を包んだ。

椛「ありがとうございます…///」

そう呟くとああ、とだけ短い返事が返ってきた。それだけで私を満たすのは十分だった。こんなにも幸せでいいものだろうか、不安になるけれども私という生き物は単純で文次郎さんが手をそっと握ってくれただけでそんな不安吹き飛んでしまったのだった。

椛「…///」


新野「とりあえず見える様になることが再確認できて良かったです。ですがまだ、夜の光の中でなれることだけを考えていきましょうね」

伊作「そうだですね、焦りは禁物ですよね」

椛「そうですよね…私、頑張ります」

文次郎「伊作が突っ走っていたようにしか見えなかったがな」

伊作「ごっごめん」

文次郎さんが善法寺さんをからかうそのやりとりが何だか楽しくてふふっと笑うと握ってくれていた手をきゅっとしたのだった。

新野「今日はこれくらいにしておいて、夜のリハビリの間で私たちがちゃんと見えるようになったら次の段階にうつりましょうね」

文次郎「次の段階とは?」

新野「今度は夜ではなく昼間に時間を変えるだけです。そう難しく考えることはないですよ」

椛「お昼にリハビリするんですね、新野先生のお仕事の邪魔にならいでしょうか?」

新野「それも私の仕事ですよ」

伊作「そうだよ、それに椛ちゃんもきちんと仕事をするんだから気にしなくていいんだよ」

椛「はい、ありがとうございます」

文次郎「そんな事より、まずは自分のことを考えるんだ」

新野「まあ、まずは夜のリハビリが落ち着くまではゆっくり目を慣らすことを考えてください」

椛「はい、ありがとうございます。」

それでは今日の診察を終わりますよと先生はいい部屋を後にした。

文次郎「診察が終わったのなら俺もそろそろ部屋に戻るとするか」

伊作「あっ文次郎は少し椛ちゃんの相手をしてから部屋に戻って」

椛「へ…?」

文次郎「診察は終わったんだ夜に男がいるのはあまりよくない事だろうが…」

伊作「目を慣らしていくためだよ、僕はまだ仕事があるし文次郎なら気軽に椛ちゃんも話をできるだろう?」

文次郎「だが…」

伊作「椛ちゃんの為だよ、少しでも長く鳴らしておいたほうがいいんだから」

椛「文次郎さんの迷惑では…」

不安そうにそう呟く椛、そんな訳ないだろう。二人でいられる時間が増えるのはとても嬉しいのだが…

伊作「そうそう、明日からは診察がないからね」

文次郎「そういうことだ?」

伊作「毎日だとストレス溜まってしまうからね。次の診察は一週間後だよ
それまでは文次郎と寝る前にお話をしながら目を開けて慣らす練習をしていてね」

椛「それでは文次郎さんに負担がかかってしまうので私一人でします」

文次郎「こら、そんな事負担だと思うわけないだろう」

椛「ですが…」

文次郎「いいから…」

そういうと有無を言わせないとでもいうように私の握っていた手をまた強く握った。どうしてそんなにも優しいのですか?私は勘違いをしてしまいます、この繋がっている手から感情が流れ込んでしまえばいいのにと勝手なことを思いながらはい。と短く返事をするしかなかった。

伊作「ふふっそれじゃよろしくね。」

椛「あっ善法寺さん今日もありがとうございました」

伊作「椛ちゃんもお疲れ様」

そういうと善法寺さんは出て行った。そして二人きりになるとなにをするでもなく何を話すでもなくただ手をつないでいるだけという時間を過ごしたのだった。
それだけなのに嬉しくて幸せでもっともっと好きになっていったのは誰にも内緒

暫くして部屋を出る前におやすみと文次郎さんが掠れた声で言った。おやすみなさい。というとまた短くああ、と返事をして部屋を出て行ったのだった。

ただ挨拶をしただけそれだけの事なのに幸せな気分で眠りにつくのには十分で私は深い深い眠りに付くことができたのでした。

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