強くなる魔法
昨日のことが聞けず仕舞いな俺は今、椛と一緒に夜なのに明かりもつけていない真っ暗な保健室にいた。
椛「……」
新野「そんなに硬くならなくて大丈夫ですよ、リラックスリラックス」
伊作「そうですよ、痛い事や苦い薬を飲むことはしないから大丈夫ですよ」
椛「はいっ」
伊作「ははっ文次郎なんとかしてあげて」
文次郎「…俺にどう出来るとは思えんがな」
椛「…うう」
文次郎「何をそんなに緊張してるんだ?」
椛「やっあの…よくわからないです//」
文次郎「…ったく、とにかく深呼吸でもして落ち着け」
そっと椛の手を握り深呼吸を促す、頬を赤らめるとそっとスーハーと息を吐く
椛「はっはい…//」
新野「おやおや」
伊作「仲が良いね」
文次郎「なっ…伊作!こっち見てないで早く支度しろよな…//」
ごにょごにょ、と後になるにつれ小さくなっていく反論。そう言いながらも繋いだ手は離そうとしない訳で本当…仲が良いねえ。
新野「さあ、支度が出来ましたよ」
椛「っ」
伊作「ああっほらそんなに緊張しないで?」
新野「そうですよ、まずは夜に包帯を外して月の明かりから慣れるようにしましょうね」
椛「月の明かりから…?」
伊作「いきなり太陽の光だと強すぎて目がびっくりしちゃうからね」
椛「そうなんですね」
新野「じゃあ包帯を外して下さい。そしたら自分のタイミングでいいです、ゆっくりと目を開けて下さいね」
椛「はっはい…」
文次郎さんと繋いだ手を離し包帯に手をかける、ゆっくりと外していけば露わになる目。
開けなければ…そう思うのに中々開けられない、怖いんだ。
文次郎「焦る事はない…椛のタイミングでいいから」
そう言って私の手を再び握ってくれる文次郎さん、嗚呼もうどうして、すっと入ってくる文次郎さんの言葉…私が目を開く理由にするのには十分で、ゆっくりと私は目を開いた
新野「まだ何も見えないかもしれませんから、お茶でも飲みながら気長に待ちましょうね」
椛「はい」
伊作「じゃあ僕はお茶を持ってきます」
新野「お願いします、善法寺くん」
その日は、結局見えはしなかった。真っ黒から薄い黒へと変わったくらいで
それでも隣で文次郎さんが手をずっと繋いでくれていて暖かくて何とも言えない幸福間で満たされていたのです。
ゆっくりと、時間をかけて自分のペースで慣れていけばいいんだ、と心がほわりとしました。明日からはお仕事もあるんだ、この人のために沢山頑張ろう
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