熱く熱く燃える
団蔵「椛さん、椛さんいますか?」
あのままずっと眠ってしまっていた私は団蔵くんの声で起きた。とんとん、と戸を叩き優しく私の名前を呼ぶ団蔵くん何故だかさっきの出来事がなかったかのように感じた。
椛「…」
団蔵「椛さん…?」
文次郎「椛…?」
ぼーっとして返事をしていない私を不審に思った2人は戸を開けた。すっと戸が開くといつもの匂い慣れた文次郎さんの匂い…嗚呼今度は本物だ。
団蔵「椛さんどうかしたんですか?」
椛「へっ?」
団蔵「返事がなかったし…なんだかぼーっとしてますよ?」
椛「あ、その、寝ちゃってたからかな…へへ」
団蔵「椛さん居眠りしてたんですね」
ふふっと笑う団蔵くんの声に癒されて私は眉間に皺を寄せて私の方をじっと見つめている文次郎さんに気がつかなかった。
文次郎「…包帯…どうした」
椛「…少し痒くて外していたんです…」
文次郎「…そうか」
包帯のことを問われ私は少し戸惑ってしまった。まさか、聞かれるなんて…だけれどあんな事があったなんて…言いたくない。
団蔵「椛さんが包帯を外しているの初めて見ました!」
椛「いつもつけてるもんね」
団蔵「つけてない方がいいですよ!椛さん可愛らしいお顔してるんですねー」
椛「ふふっありがとう//」
団蔵「先輩もつけてない方がいいと思いませんか?」
文次郎「ああ…そうだな」
嬉しそうにじゃれ合う2人を眺めながら先程の反応の事を考えていた。入った時に感じた椛の異変、頬には涙の痕、包帯、そして微かに香る誰かの匂い椛ではない人物の匂いがまだ残っている…確実に、何かあった。
包帯の事を問うた時に一瞬椛の体がビクついたのを俺は見逃さなかった。…一体俺が来るまでに何があった…?くそ、団蔵の前で聞く訳にもいかないしなモヤモヤして仕方がない
団蔵と楽しそうに話す椛を見ながら後で聞いて見ようかと思ったが…素直に話してくれるだろうか…
椛「そうだ、団蔵くんも制服を破いてしまったらすぐ持ってきて下さいね?」
団蔵「はいっ僕すぐ破いてしまうからすぐ持って来ちゃうかもしれません!」
椛「ふふっ授業頑張ってるんだね」
団蔵「はいっ」
椛「今日は委員会とかはないのですか?大丈夫ですか?」
文次郎「あっああ、もう少ししたら委員会が始まるその前に椛に会おうと思ってな、団蔵も会いたがっていたから」
椛「ふふっありがとう。私も会いたかったよ」
団蔵「へへっ//」
団蔵を優しく撫でる椛は姉の様で母のようで…一瞬椛と団蔵が俺の家族かのような錯覚を起こししまった。
文次郎「何を考えてるんだ馬鹿タレ…//」
椛「へ?どうかしましたか?」
文次郎「いっいやなんでもないっ//」
こんな考えを椛に知られたらお終いだ、恥ずかし過ぎて死ねるな…
椛「そうですか…?」
団蔵「そうだ!椛さんにプレゼント!!」
ジャジャーンと言いながら椛の手にそっと握らせる。
椛「これは…?」
団蔵「栞です!」
椛「栞??」
団蔵「はいっとっても綺麗だったから椛にプレゼント!目が見えるまで見れないけど」
椛「ありがとう大切にするね」
団蔵「まだ見れないけど、楽しみが一つ増えたでしょう?」
椛「本当だ、とっても楽しみだもの」
文次郎「良かったな」
椛「はいっ」
形のいい唇をゆるりと曲げにっこり笑う椛の顔を初めて見た、包帯を外しているからまた違う椛の顔…反則だろ…//
文次郎「//っ…//」
団蔵「椛さん可愛い!」
椛「へっ!?//」
団蔵「やっぱり椛さん包帯ない方が可愛いー!…はっ!!だっ駄目っ駄目だ!!」
椛「えっえ?何が駄目なの!?」
団蔵がいきなり慌て出したので椛も思わず慌てる。わっ私何か団蔵に今の今で何かしちゃったのかな…もっもしかして私の笑顔酷かったんじゃ…!?
文次郎「落ち着け団蔵、一体どうしたんだ?」
団蔵「落ち着いてる場合じゃないですよ!潮江先輩っ」
文次郎「いやだからどうしてそんな慌ててるんだ」
団蔵「落ち着いてられないですよ!椛さんこんな可愛いんですよ!?こんな可愛いかったら他の先輩達に目を付けられて取られちゃいますよ!!」
文次郎「なっなんだと!?」
椛「だっ団蔵くん…文次郎さん…」
声をかけてみるが団蔵と文次郎からは返事はなく2人して慌てていた。そしてひとしきり話し合った後で団蔵が凄い剣幕で言ってきた。
団蔵「椛さんっ決して僕と潮江先輩の前以外外しては駄目ですよ!!」
椛「えっえ?」
団蔵「これも潮江先輩のため、僕の為です!」
椛「あの…よくわからないけど、治療する時は外さないといけないんだけど…」
団蔵「その時はいいですけど、すぐ付けて下さい!」
椛「はっはあ…」
文次郎「すまない…理由は言えないが俺の我儘に過ぎない、嫌なら聞かなくてもいい…」
団蔵「潮江先輩そんなんじゃ駄目ですっ」
椛「文次郎…さんの我儘…//」
よくわからないけど何故だか照れてしまった。初めて文次郎さんが私に我儘を言ってくれた、私の事を優先してくれている文次郎さんが…//嬉しい、正直に嬉しかった。
文次郎「ああ、俺の我儘だ」
椛「//っ文次郎さんが嫌なのなら…私は嫌がる事はしたくありません//」
文次郎「そうか…」
団蔵「…椛さん、潮江先輩…//」
団蔵の前という事も忘れ椛の頭を優しく撫でる文次郎はかっこ良くて、心の中でメラメラと燃えていたのだった
団蔵「(僕が邪魔者を寄せ付けないようにしなきゃ!)」
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