再開するとき

休みの日になり俺はおばちゃんにおにぎりを作ってもらい朝から学園を出た。それはあいつらに悟られぬ為…椛に会いに行くと知られたらついてくるに違いない。
という訳で朝から出て鍛錬をしつつ椛の村まで言った。

昼ごろになると休憩をしておにぎりを食べた。椛に会いに行く…それだけでドキドキした、いきなり行って迷惑ではないだろうか?今更ながら思った。

そもそも会いにいくと言ったものの、すぐ会いにくるなど思ってもいないだろうしな……

でも会いたいという気持ちが止められなくて足が椛の村の方へと動く…もう少しでつくという時に桜の声が聞こえた。

桜「まーあーだーだーよおーーー」

文次郎「かくれんぼか?」

大きな声を一所懸命だして必死に隠れる桜を見て少し笑ってしまった。俺も小さい頃はよくやったもんだ

木の後ろに隠れる桜に近寄るとばれないように肩をたたく

桜「わああーびっくりした!ああっ文兄だー」

「あー桜ちゃんみいーっけ」

桜「ええー今はたんまだよ」

「あれ?誰そのお兄さん」

桜「文兄だよ!」

文次郎「文次郎だ」

「ふうーん僕太郎よろしくね」

文次郎「ああ、よろしくな」

二人の頭をなでてやるとくすぐったそうな二人の声がして柄にもなくかわいいなって思った

文次郎「椛はいるか?」

桜「姉様に会いにきたのー?」

文次郎「ああ」

桜「姉様は家にいるよーあそこが私のお家」

文次郎「あそこか、分かった」

桜が指さす家に向かった。ドキドキドキ…心臓がうるさい。こんなに緊張するのはいつぶりだろうか?

文次郎「…椛いるか?」

俺が家の中をのぞき声をかけると椛はびくりと体を揺らした後此方を向いた

椛「も…文次郎さん?」

文次郎「そうだ、椛元気にしていたか?」

椛「はっはい…//」

文次郎「約束した通り会いに来た、俺と出かけないか?」

椛「え?でも私はあまり歩けないし…」

文次郎「歩かなくてもいい、俺が担いでいくからな」

椛「へ?」

文次郎はそういうと椛の方に近寄り触るぞと声をかけると足と腰に手を回し抱き上げた。

椛「あっあのっ///」

文次郎「なんだ?」

椛「えっとその……その…//」

文次朗「ん?」

体の半分が文次朗さんに触れている……熱い。平喘と私を抱き上げてしまうとスタスタと歩いて行く、何処に行くのか分からないけれど緊張してしまっている私はどもってしまい喋ることが出来ないでいた

私があわあわしている間に文次朗さんは目的地に向かっている様で、何処に向かっているのか教えてはくれなかったけれど時々話しかけてくれて緊張している私を気遣ってくれた。

トクントクン…心臓の音が聞こえてしまうのではないかと不安になってしまう程緊張しています。文次朗さんに触れている部分が熱くて燃えてしまいそう……けれど何故か心地よくもあってなんだか離れたくないな……なんて思ってしまいます。

文次朗「よし、付いたぞ」

椛「ここはどこなんでしょうか?」

程よく歩いた時でしょうか?私にはどれくらい歩いたのか分かりませんか…文次朗さんは程よい高さの岩に私を下ろしました。

文次朗「ここは特に何があるわけでもないんだが、綺麗な花が咲いていてな……」

文次朗は花を一つ摘み取ると椛に渡した。

椛「花びらの大きな花ですね、これは何色ですか?」

文次朗「俺は花とかよく分からないから名前とかは知らないけど淡い赤で綺麗だ……」

椛によく似合うと思った。花を壊さない様に恐る恐る触りながら微笑む椛はよく言い表せれない程可憐だった。

椛「淡い赤ですか、とても良いにおいですね。文次朗さんありがとうございます」

文次朗「ああ…//」

此方を見て微笑む椛、目は見えないけれど俺には見える様な気がした。ふっくらとした唇が形良く曲げられ俺が顔を赤くするのに時間はかからなかった。単純に可愛いと思う、素直に言葉を伝えてくる所とか。

ドンドン惹かれてくのが分かる。いるだけで、一緒に時を過ごすだけで好きになる。この気持ちが勝手に伝わればいいのにとさえも思う。寧ろ伝わればいいのに

椛「私はとても幸せ者ですね」

文次朗「?」

椛「目は見えなくなったけれど四歳までの知識があるから全てを知らない訳でないでしょう?だから色は分かるし……こうしていろんな事を教えてくれる桜や………文次朗さんがいるんですから//」

文次朗「ああ、そうだな。」

そう言って微笑む椛はとても幸せそうで思わず頭を撫でた。椛が嬉しいと俺も嬉しいと思う。

椛「………//」

俺の手を嫌がる事なく受け入れる椛、頬を染め照れているんだなと思った。一応は意識されているのか?

文次朗「椛はもし………もしも」

椛「もしも?」

文次朗「もし目が見えるとしたら……治療してみたいと思うか?」

椛「目が………?」

文次朗「ああ……もしかしたら見えないままかもしれない。酷い事を言っているのは分かっている」

椛「そう……ですね、もし見えるのなら治療してみたいですね」

文次朗「一度……学園の校医に見てもらわないか?」

椛「学園の先生にですか?」

文次朗「ああ、新野先生と言うんだがとても優秀な先生でもしかしたら椛の目の事もどうにかしてくれるかもしれない」

椛「でも………」

文次朗「椛の話で俺は可能性があるかもしれないと思ったんだ。深く聞いてはいないし俺は医者でもないかから断定は出来ないが」

椛「どこに可能性を感じたんですか…?」

文次朗「椛は引っかかれた方と石が刺さった方があると言っただろう?」

椛「はい」

文次朗「もし眼球まで引っかかれていなければ可能性はあるんだ」

椛「眼球………」

椛は片方の目を包帯の上から抑えると考え込む様に黙ってしまった。

文次朗「無理にとは言わない、これは俺が勝手に思っているだけで見えないままかもしれない。だから強要はしない」

椛「………はい」

文次朗「考えて見てくれ」

椛の頭を一撫でして俺も隣に腰を下ろした。不安そうに唇が歪む、やはり伝えるべきではなかったのかと思ったが言ってしまったことは取り消せないから仕方が無い。

椛「文次朗さんは………私の目が見えるとしたら」

文次朗「俺は椛の目が再び見えるとしたら嬉しいと思う。再び色を移し景色や人、物俺が見ている物を共有できるんだそれは嬉しい事だと、思う」

椛「同じ物……」

文次朗「椛はもし見えるとしたらまず何を見たい?」

椛「私は………」

少し考えると俺の方を向いて言った。いつもより小さな声で貴方の顔、と。ドクンドクン波打つ心臓。

文次朗「ものすごく……期待に添えない顔だったらどうするんだ//」

椛から顔を背けて片手で覆い呟く。久々に見えるのに俺でいいのか!?なんて思ったり嬉しかったり、兎に角顔が赤いのは確かな事だった

椛「きっとそんなはずはありません、もしそうでも文次朗さんは文次朗さんです//」

そう言った椛は可愛いくてふわふわとした気持ちになった。嗚呼俺も椛にみて欲しいと言ったらどんな反応をするんだろうか

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