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【貴女は信玄の親戚設定】



『幸村…起きてますか?』


静かな夜。
夜も深くなった中、目を閉じて次の戦の作戦を考えていた幸村は小さな声が外から掛かり目を開けた。


『起きてますよ、いかがなされましたか』


声を聴けば誰かはすぐに分かる

それが愛しい人の声ならば尚更…。


障子を開けると


『こんな遅くにごめんなさい…あの…朝は早くに発つと聞いて…』


少しうつむき加減に話す顔は寂しそうで既に瞳は潤んでいた。


いつも私が戦に出る前は
こうして私を気にかけて来てくれる。


あなたの心の内を私は知っている


でも私は明日をもしれない身…


本当にあなたを想うからこそ知らないふりをする
己の心にさえも…


『御武運をお祈りしています』

『ありがとうございます…姫様』


それにあなたは姫君
私は身分をわきまえねばいけない。


『それでは…幸村、おやすみなさい』

『ごゆるりとお休みなされますよう』


静かに去りゆく後ろ姿
その細い腕を掴んで引き寄せられたら
どれだけの言葉をあなたにかけるだろうか

戦から帰るたびに私の姿を見ると奥座敷で泣いているのも知っている

だから私は
お館様や自分の為だけではなく


あなたの為にも負けるわけにはいかない


…………

…………

…………




……何かが違う気がした




私が何も言わないから泣かせてばかりいるのではないか…?

たとえ嘘だとしても安心させて戦に行ったほうが…


『姫様!』


ゆっくりと振り返る姫。


その頬は涙で濡れていた。


幸村は姫に駆け寄り抱きしめる。


『ゆ…きむら…』


『あなたは何故いつも泣いているのですか。私は頼りなくすぐに死んでしまいそうですか?』


『ち、違います!』


驚いた顔で幸村を見上げる姫

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