恐らく特権


スタースクリームは迷っていた。
あっちへウロウロこっちへウロウロ、メガトロンの前へ歩み出ることをためらっていた。

扉の向こうへ足を踏み入れてしまえばあとは勢いに任せるだけなのだが、如何せん、先程から主の機嫌すこぶる悪い。

原因は(恐らく)自分ではないが、どんなとばっちりを受けるかと考えるとどうしても気が進まなかった。

「何をしてるの?」

そこにこの来訪者、ユズである。タイミングの悪い時に会ったものだと唸った。彼女もメガトロンに用があるらしい。

「残念、俺の方が先客なんでね」

「じゃあ早く中に入ってよ…あ、そっちがすぐ終わる用事なら一緒に」

「いいからあっちにいってろクソチビ!俺様クラスの身分になると報告することが山ほど有るんだ」

「ああ、話の長い奴は仕事も遅い、って私が尊敬する偉大な科学者がよくいってた」

「お前…可愛らしく振舞っておけば、贔屓にしてやってもいいのによ」

「スタースクリームに媚びうる暇があったら自分の研究に没頭したいなあ」

腹立たしいことこの上なく、このまま踏み潰してしまえたらどれほど気分が良いだろうかと考えずにはいられない。

「ああもう、時間がもったいない。先にいくからね」

「何?!おっおいまて!」

スタースクリームの意思に関わらず、扉は開かれてしまった。向こうにいる真っ赤な双眼が、鋭くこちらを睨んだ。今までの会話が聞こえていたのかもしれない。

だがすぐに視線が下へとずれていく。彼女が、自分の存在を主張するように声を張り上げたためだ。

「少しお時間をいただきたいんですがよろしいですか?あっ、私は後でもいいです。勿論都合が悪ければ出直しますし」

「…構わん」

一瞥くれただけのメガトロンに、ユズは断りもなくヒョイと肩へ飛び乗り、普段の調子で話を続けた。

「ご機嫌ななめですね」

「ろくに働かない部下ばかりでな、スタースクリーム?」

「えっ、あっはいはい、はは、そうでございますねえ、全く!あいつらときたら」

「私も、できたらメガトロン様にサウンドウェーブ10体くらいプレゼントしたいといつも思ってます」

「それはいい。ほとんどが事足りる」

この陰気で薄暗い戦艦にそぐわない、大きな高い声が響くだけで、トゲトゲしい言葉とは裏腹に雰囲気はだいぶ和らいだ、ような気がした。

慎重に言葉を選ぶスタースクリームに対し、ユズは不躾なほど自然に振舞っている。それでいて、彼の反感をかわないのだから不思議なものだ。

「えーと、それで?スタースクリーム、お先にどうぞ」

このタイミングで俺に話を振るのかと、スタースクリームはますますユズに腹が立った。


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