いち量産型の記録.4


※実写主人公と少し繋がってますが、未読でも大丈夫です。
※夢要素極薄。


ショックウェーブ。

宇宙一イカれた科学者であるということくらいしか私は知らないが、周りの仲間も、その程度なら知っているはずだ。サイバトロニアンの中では、あまりにも有名な存在である。

その頃、始めから否定的な意見しか持っていないスタースクリームの苛立ちは頂点に達していた。もう少しマシな嘘をつけと、ひどい剣幕で迫っていたが、メガトロン様は正反対に落ちつき払っていた。

「要するに、お前は元いた場所に帰りたいわけだ」

パッと顔をあげ、人間は数回頷く。

「こいつの言うことを信じるんですか?!」

「黙っていろスタースクリーム。その話が真実か否かなど、どうでも良い。元の世界へ帰る為の研究に力を貸してやろう。我の支配の下にある、あらゆる資源を使って構わない。お前が我に、仕えるというのならな」

主の考えなど私達には恐れ多く、ほとんど汲み取ることはできない。いや、理解不能であると言っても過言ではないほどだ。口を挟むなど以ての外なのだ。

すっかり面食らったのは何も私達だけではなかった。当人さえ、同じであった。

「こんな正体不明な異人を雇っちゃうんですか?」

「お互いにとって、悪い話ではあるまい」

「あなたは本当にメガトロン様なんですね。未だに半分、信じられませんけれど。」

拒んだところで、たどり着く運命は決まっている。彼に尽くすかどうかを問われているのではないのだ。生きるか、死ぬか、二つにひとつ。人間はもう一度、目を閉じた。

ここからは完全に私の憶測だが、あの人間は戦いの終わった世界から来たのであって、そこはオートボットやディセプティコンなどという隔たりのない場所であったはずだ。

再びこの両者の戦争の最中に放り込まれ、ディセプティコンという組織に身をおくということは、一体どんな感情を伴うのか。非常に大きな決断である。私が同じ立場なら、あれほど冷静でいられるだろうか。

「ひとつだけ、お願いがあります」

“お願い”とは言ったが、内容はほとんど“条件”といっても良い程であった。

「私はディセプティコンでも、オートボットでもありません。その言葉通り、あなたに仕えるのです」

つまり争いごとに左右されないための最低限の立場を保証しろということだ。ただし、絶対に裏切りはしないと。ふたりの利害が一致する限りは。

「良いだろう」

メガトロン様は、ここにいる誰よりも楽しそうであった。私には一生をかけても到達できない領域だろう。

拘束を解かれた人間は、主を見上げて名を告げた。

「ユズです」

そして初めて、にこりと笑って見せたのである。

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