いち量産型の記録.3



※実写主人公と少し繋がってますが、未読でも大丈夫です。
※夢要素極薄。


メガトロン様の登場により、埒のあかぬ押し問答は終わりを告げた。スタースクリームは少々焦りながら、これまでの結果を短く簡潔に報告した。

というよりは、その報告こそが、この短時間のうちに知り得たことのすべてだったが。

「メガトロン様、申し訳ございません。こいつがサイバトロン星から来たとかわけのわからないことばかり言うもので」

はじめ私は、この人間はメガトロン様に対して恐怖の感情を持ったと解釈したがそうではなかった。

あまりにもハッキリと、堂々とした口調で話を始めたからである。

「信じても信じなくてもいいけれど、私のいたサイバトロン星も一度は滅んだ。でも、オートボットとディセプティコンは長い戦いの末に休戦協定を結んで復興に尽力することにしたの」

あまりの馬鹿馬鹿しさに、また笑いが起こるかと思った。オートボットとディセプティコンが休戦するということは、オプティマス・プライムとメガトロン様がお互いの手を取り合うということだ。到底あり得ない。

だがメガトロン様だけはじっとその人間の瞳を見据えていた。

「私は、私を作った宇宙一偉大な科学者の助手を務めていて、さっきまで彼と時を超える実験の最中だったのに…。まさか次元を超えちゃうなんて。同時期に、こちらの次元から何か莫大なエネルギーが干渉してきたのかも」

難しいことはわからないが、その莫大なエネルギーとは恐らく我々が行った実験の肝であるダークエネルゴンのことだろう。

だとしても、そんな夢のような話を信じられる訳がない。ここにいる全員がそう考えていたはずだ。恐らく、ひとりを除いては。

「その科学者の名は?」

試すような口調で、メガトロン様は人間にひとつだけ質問をした。それは目を閉じ、決意したように顔をあげる。
その時、私は見てしまったのだ。瞳がきらりと、紫色に輝いた瞬間を。妖しげに燻る、ダークエネルゴンの炎を。

「ショックウェーブ」

誰も、起動音ひとつ漏らさない。人間がまた、ここにはいない者の名を口にしたのだ。


- 14 -

[*前へ] [#次へ]

戻る
リゼ