いち量産型の記録.2
※実写主人公と少し繋がってますが、未読でも大丈夫です。
※夢要素極薄。
過去に捕獲したことのある人間と同様に、両腕に鎖を巻き、上から吊るして動きを封じた。観察すればするほど、ほとんど虫けら同然である。
スタースクリームがピンと横っ腹を指で弾くと、人間は目を覚まし、目前に佇んでいるスタースクリームの姿を認めた。
「知らないディセプティコン…。誰?」
エンブレムを見ただけで、我々をディセプティコンと認識した。やはり、オートボットの仲間という線が一番高い可能性を帯びてくる。だが、もしそうなら、「知らないディセプティコン」などという言葉を使うだろうか。
「ディセプティコンは知っていて、俺様のことは知らないのか?」
やはり彼も同じ疑問を持ったようだ。
「幹部なら大体知っているけど」
「それなら、俺様スタースクリームの名前くらいは聞いたことがあるだろう」
「スタースクリーム…?嘘、嘘だ。私の知ってるスタースクリームじゃない。スタースクリームって、だって、もっと」
人間は何度も瞬きをし、目を泳がせ、声を震わせた。その後何を聞いても支離滅裂な話ばかりを繰り返すので、スタースクリームもいい加減、痺れを切らしたようだった。
「ふざけるな。俺様は俺様だ!一体お前は何者なんだ?オートボットの仲間か?奴等は今何処にいる?」
「オートボット…みんなもいるの?オプティマスも?ジャズも?アイアンハイド、ラチェット、バンブルビーも?」
「なんでここにいない奴らの名前まで…」
「ここはサイバトロン星じゃないの?私はさっきまでそこにいたのに」
甲高い笑い声が響き渡る。ここがサイバトロン星?なぜそんなことを言い出すのか。頭がおかしいとしか思えない。その場にいた誰もが思ったことだろう。
一番に面白がっていたスタースクリームは言った。
「とっくに滅んでいる我らが故郷のことか。まだ寝ぼけていやがるな。何故だかわからんが、お前は肝心なことを知らないようだから教えてやる。ここはディセプティコンの戦艦だ、地球の上空を飛んでいる、オートボットとはまだ決着はついていないが後々一匹残らずぶっ壊す。」
「そんな、そんな!じゃあ私はどうしてここにいるの?あなたが本当にスタースクリームだっていうならまさか私は…そんなことあり得ない!」
「俺様は忙しいんだ。これ以上しらを切るつもりならこちらにも考えがある。さあ、吐きやがれ!何故あの場にいた?オートボットとの関係は?何故俺たちに攻撃をしかけてきた!」
鎖を一掴みにし、ガチャガチャと音を立てながら答えを急かした。そろそろ捕虜に危害を加えかねない雰囲気である。
前にもやりすぎて、艦を破壊し、メガトロン様の怒りに触れたことがある。この辺で止めておかなければならない。
だが人間は、何か答えようと口を開きかけたようだった。その時何を言おうとしたのかはわからない。結局、声になることはなかったのだ。
ゆっくりと、確実に近づいてくる足音。威圧感溢れる巨体。注がれる鋭い眼差し。その目的が自分でなくて良かったと、我々でさえ安堵するほどの存在がそこに現れた。
「メガトロン様?」
呟くような声量でも、その場にいた全員が聞き取れた。
スタースクリームが、彼の名を呼ぶ前に起こった出来事である。
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