いち量産型の記録.1



※実写主人公と少し繋がってますが、未読でも大丈夫です。
※夢要素極薄。



数多くの、同じ型が散って行った。珍しいことではない、むしろ日常なのだ。

私は運良く、今も生きている。
だから彼女と初めて出会った時のことも、こうして語ることができる。

あれはまだ、スタースクリームがメガトロン様に仕えていた頃だった。ダークエネルゴンを使用した大規模な実験で、私は現場に駆り出された。内容は、ダークエネルゴンのエネルギー増幅であった。

単純そうに聞こえるが、エネルゴンの精製法さえ未だに研究中である中で、この実験の成功率はすこぶる低かった。

現にオーバーヒートした機器が大爆発を引き起こし、艦にまで影響を及ぼしてしまうところだったのだ。

実験は地球の荒地で行われたため、巻き添えを食った仲間以外に被害はなかったが、爆発の中心にとある生命体の反応が確認された。

人間である。私は混乱していた。まさかそんなはずはない。あの爆発で、貧弱で脆い人間が形を保っていられるはずがない。そう何度も首を横に振った。

実際に確認をしようと、仲間が近寄った。するとその人間は身じろぎ、体を起こし、我々を見渡した。人間は、酷く動揺したらしかった。どうせ何もできるはずがないと高を括っていたが、驚いたことにその人間の腕はみるみるうちに強力な武器へと変化を遂げたのだ。

小さな体の、どこにあんな力があると言うのだろう。我々の誰もが想像もしていなかった。人間(と呼べるかどうかは最早曖昧だが)の放つ砲弾は、一度外気に触れただけで大きさと威力を増し、ただの一発で仲間を三体も吹き飛ばした。

そして、あの脚力とスピード。人間は我々の弱点を知り尽くしていた。駆け抜け、飛び上がり、頭へ蹴りを一撃食らわせただけで、仲間達は次々に意識を混濁させ倒れて行ったのである。

我々は勿論応戦したが、やはりどこかにあれを見くびっている感情が巣食っていたに違いない。そんな中、「生け捕りにしろ」と上層から命令が下されたので、動きを封じるために余計な手間がかかった。

恐らく、その時殺してしまっていた方が簡単だっただろうに。

手中に収まったその人間は気を失っていた。だが確かに生きている。この人間と後々長い付き合いになろうとは、その時は考えもしていなかった。


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