狂者がふたり

「肩を借りてもいいですか?メガトロン様」

メガトロンは、後ろにこじんまりと佇むユズを一瞥しただけで、すぐに視線を元に戻した。ユズはそれを肯定と受け取って、2ステップほどで彼の肩までたどり着いた。メガトロンの視線の先は、大きなウィンドウから透けて見える広大な宇宙。この威圧的な艦隊ネメシスでさえ、目の前に広がる景色の中では小惑星よりもとるに足らないものなのだろう。

「疼くのか」

メガトロンは、ユズの瞳を覗いた。それは黒々とした普段の色を失い、邪悪の象徴のように紫色に輝いている。自らの瞳の共鳴し合うのを感じ、楽しそうに口角をつりあげた。

「面白いやつだ。ダークエネルゴンに犯されてもなお、お前の貧弱な体はその精神を保っている」

「うーん…あまり効いてないんでしょうか?」

「認めるがいい、お前は狂っているのだ。自分が思っている以上にな」

「あの、結構失礼なこと言ってますよ!」

初めて出会ったあの日、ダークエネルゴンは彼女の体を蝕んだ。いいや、共存しているといっても過言ではないだろうか。

「そうでなければ、我の元へおいたりなどしない」

返事はしない。だが、じっとメガトロンを見据えた。

殺戮、戦闘、爆撃、兵器、生と死。
それら全てを知っている。だがその中にも平和を望んでいるといったら、彼はなんというのだろう。
またはそんなことなど最初から見透かされていて、それが異常なのだというのだろうか。

いいや違う。それを望みながら、ここにとどまっていることこそ

「やっぱり私、頭おかしいかもしれません」

「物分りが良くて助かる」

「メガトロン様は、私をあとどれだけ知っているんですか?」

弱き者なら思わず身震いがしているだろうその笑い声は、低く静かに空間を揺らす。この宇宙までもが、彼の威を増長させているのではないかと錯覚する。

「お前はあと、どれだけお前を隠しているのだ?」



彼女がにこりとやりかえしたその笑みに、メガトロンは何を視たのか。
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