ひそひそ

突如研究室内に入ってきたサウンドウェーブのドローン、レーザービークに肩を掴まれ、体がぶわりと浮き上がった。間一髪、ユズは自分のPCをかき寄せ、それを抱きしめたが、そんなことなど構いも無くレーザービークはただ決められた一筋の道を飛んでゆく。

たどり着いた場所で、ユズはちょっとした悪態をついた。

「サウンドウェーブ、いつもレーザービークで私を呼び出すのやめてくれないかな」

これが一度や二度ではない。サウンドウェーブは聞いているのかいないのか、作業しているパネルの隅を指先でコツコツ叩きユズにこちらへくるようにと合図した。

「この間の調査結果でしょう?こっちの美術館の反応はにてるけど全く別の物質だった。ほんとだよ、一応行って確かめてみたから。必要なら分析データ渡す…いらない?そう。」

「個人的にはK点…今人間たちが化石の発掘で穴だらけにしてるところなんだけど、ここならデータベースの波長と一致するし、探し物があるとしたら一番有力だと思う。えっ、今から行こうと思ってたところにサウンドウェーブが呼び出したんでしょう?一人の方がいいよ、目立つから…」

「ああもう大丈夫だってば。えっ?うーん…たしかに…オートボットも感づく可能性は大きいけど…。わかったわかった、ノックアウトはさっきまた何処かにフラっと出てったからブレークダウンにでもついてきてもらう。場所が場所だからビークルも装甲車の方が丁度いいよね」

「ユズ」

無口な彼との話の最中に名前を呼ばれたのでハッとしたが、声の主は当然ながらサウンドウェーブではなかった。 ブリッジの中心でジッと考えを巡らせていたメガトロンである。

「もう少し静かにできんのか、お前は」

「ごめんなさい。あとちょっとで終わりますから…え、なに?サウンドウェーブ…えええーやだよ。私、通信は嫌いなんだ…直接頭に響いてくるのが苦手で。だからいつも回線遮断して改造携帯使ってるの。それに隣にいるのに全部通信って…さみしいじゃない。こうして顔を合わせて声で」

「ユズ」

「あああはい、はい、メガトロン様すみません」

なかなか大目に見てもらっている自覚はあるのだが、さすがにそろそろブリッジから叩き出される予感がししてきた。するとまた、メガトロンの声がユズを呼んだのだ。ユズはびくりと肩を震わせてメガトロンの方を向いたが、彼は既に彼女から意識をそらしており、今の声はサウンドウェーブから発せられたものだと認識した。

ユズは人差し指を唇に添えて、「しーっ、静かに」と仕草で訴えた。するとサウンドウェーブの片手がそっと上がり、ユズと同じように指を一本だけ立てて、ゆっくりバイザーへ寄せてゆく。

まるで秘密の会話を楽しんでいるかのような気さえしてくる。ユズは声を押し殺して笑い、パソコンをできる限り静かにたたんでからサウンドウェーブにいってきますと手を振って、ブリッジをあとにした。








「おまたせブレークダウン」

「ユズ…お前、いつも通信切ってるくせにどうやってサウンドウェーブとあんなに会話してるんだ」

「ほとんど勘だから当たってるかどうか確かめたことないよ」

「…そういうのは独り言っていうんじゃないか…?」
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