それでも反発し合う

「防御シールドはまだ直らないのか!」

苛立たしげな声が響いている。修理に当たっているビーコンが三体、頭を下げていた。このような光景は珍しいことではなく、彼の気の済むまで説教をきいていなければならなかった。だが少々高めの女性独特の声が聞こえてきた時、スタースクリームの意識の方向は彼らからそちらへとうつっていった。

「うまくいかなかった原因わかったよー…ってあれスタースクリーム」

修理中の患部から這い出てきたユズは、耳からイヤホンを取り出しながらいった。あんなに大きな声を出していたのだから普通は気がつくはずなのだが、どれほど大きな音で聴いていたのだろうか。

「お前…こんなところでなにやってるんだ」

「スタースクリーム様のご命令だと言っておりましたが」

「何?そんな命令出した覚えはないぞ。おい、勝手なことをするな!」

ユズは顔をしかめ、少々頭にきた様子で一歩前へ出た。

「私の研究室の近くでいつまでもガタガタやられてるほうが迷惑だよ。私に触られたくないのはわかるけど、ほら、私がみたおかげですぐ直るんだからね」

「うるさい!誰がお前の世話になんかなるか!」

とうとうユズはギュッと口を結んでスタースクリームをめいっぱい睨みつけた。ビーコンはというとこの間に入ってとばっちりを食うケースを恐れじっと両方の様子をうかがっている。彼らが言い争う姿はこれが初めてではない。どちらかというと毎日のことである。

「あっそう、いいよ、じゃあ教えてあげないから!」

そしてユズは真っ黒に汚れた手を叩き埃を落とし、かつかつとスタースクリームの横を通り過ぎ…ようとした。見ていた周囲もそう思っていた。だが次の瞬間、なんと彼女は飛び上がり、スタースクリームの片足へガツンと一撃食らわせて、バランスを崩した被害者はそのまま床へと身体を叩きつけてしまった。

少し気の済んだらしいユズはそのままその場を立ち去ろうとしたが、そうはいかない。ひゅっと伸びてきたスタースクリームの手が、逃すまいとユズの小さな身体をそこに収め、しっかり自分のほうへ引き戻してしまった。

「てめえこら自分の立場をわかってねえな。俺様にこんな態度とって良いと思ってるのか?!」

「何いってるのかさっぱりわからない。バカな私にもわかるように説明してよ、どうしてあんたを蹴り飛ばすのが悪いのかを!」

「そうかい!一番理解しやすいように今身体に叩き込んでやる」

「いっ、!…スタースクリーム、私の腕は今フリーなんだから、ね、それ以上力いれてみなさい、頭を吹き飛ばすから」

「な、おいよせ、こんなところでぶっ放したらまた壊れるだろうが!」

「大丈夫、スタースクリームが避けなければどこにも当たらないよ」

「よおし、わかったやってみろ。その前にお前を虫けらのように床に叩きつけて踏み潰してぺちゃんこに…」

みるみるうちにキャノン砲へと変形したユズの腕はまっすぐスタースクリームへと向けられた。彼女が自分の武器を見せるというのは滅多にないことである。このままではまた艦内が壊れてしまう、とビーコンたちは危機を感じたが、いつまでも口論を続けているところをみると両者とも言っていることを実行に移す気はないようだ。

「仲いいな」

「続き、始めるか…」

いつまでも突っ立っているのも時間の無駄である。ビーコンたちはユズが先ほどいじくりまわしていた箇所を探り当て、ふたりの喧嘩が終わる前には作業を終わらせようと、目標をたてて修理を再開させることにした。
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