職業病

レノックスや他の仲間、サムやその家族ともどこか全く違うところがユズにはある。斥侯として秀でたバンブルビーの好奇心や洞察力は、いつも彼女を観察していた。

目、鼻、髪、体型、他にも、相違点をあげればいくらでもある。この星の人間達は国によって考え方や生活、そして勿論体も違ってくることは、バンブルビーも知識として持っていた。

一度本人に聞いたことがあったが、彼女はもともとこの国の人間ではないという。日本という、このアメリカよりもっと小さな島国から留学してきたらしい。

だがそれだけの情報では、彼の好奇心は満たされなかった。

『“触ってみてもいいかい?”』

バンブルビーに抱き上げられたり、膝に乗せてもらったり、触れ合うことは日常のようにあった。抵抗はない。だが、そのように彼が聞くのは初めての事だった。

「どうぞ」

ユズが笑顔で了承すると、バンブルビーは両手でユズを抱き上げた。長い黒髪、少し黄色っぽい肌、黒い瞳、ひとつずつ、よく観察して行く。いつも遠くからや横からでしかなかったが、今日は違う。

「そんなにじっくり見られるとなんか恥ずかしいんだけど…」

『“滑らかだ"』

「(それって貧乳ってこと?)」

『“柔らかいよね”』

「そう?まあ、ビー達よりは」

バンブルビーの大きな人差し指が、さらりと髪を撫でた。できる限り気を遣って、できる限りそっと彼女の感触を確かめる。

それに気づいたユズは、人間よりも頑丈だから大丈夫だと告げた。

バンブルビーはそれでも、力を入れればすぐに壊れてしまうのではないかと恐かった。脆く儚いものほど、愛しく大切なものだと誰かがいつか言っていたのを思い出す。

「ビーはほんとにいいこだね」

ユズはよく笑う。楽しい時も、そうでない時も。

『“君は” “可愛いね”、ユズ』

確信犯なの?なんて、問いただす勇気など彼女にはなかった

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