かわいいひと


ついに。ついにこの時が訪れてしまった…!部屋にはオプティマスと二人きり。誰も入って来る様子がない。オプティマスからは納得のいく答えが出るまで私を帰さないという気迫が伝わってくるし、私の手を掴んでいる手がその予感をさらに確固たるものにする。

「すまない、ナマエ。だがこのままでは、互いのためにも良くないことだと思うのだ」

「う、うん。言いたいことはわかるよ。でも…その…」

「やはり私の気持ちは迷惑だっただろうか…?」

というより、信じられない。あの勇敢で気高いオプティマス・プライムが、私に好意を寄せているだなんて、あっさり信じろというほうが無理な話だ。告げられた時は嬉しさと動揺の間にあってただ頷いたが、時間経つに連れて急に怖くなって来てしまった。

なぜかって、今までただ尊敬の対象として映っていた人物と、より深い関係になると考えた時、とても二人きりでいることに耐えられなくなったのだ。そうならないようになるべく当たり障りなく避けて来たのだが、やはりごまかし切れるものではなかった。

「あの、というより逆というか」

「逆?」

「うっ…だから、なんかその、緊張しちゃって。今だって、オプティマスに掴まれてるだけなのに声は震えるし体はガチガチだし」

戸惑いっぱなしの私にオプティマスは笑いかけて、掴んでいた方の手を握った。

「それでは、私と同じだ。これから一緒に慣れて行けばいい」

「う、うん…え、同じ?全然違うと思う…」

「そんなことはないさ。ナマエ、顔を上げてくれ。しばらく見せてくれなかっただろう」

「はい…ごめんなさい…」

彼の穏やかな微笑は、まるで慈愛の塊だ。いつもならそれは警戒心を簡単に解いてしまうのだが、今日はまるで逆効果だ。頬に添えられた手が、二度と俯くことを許さない。オプティマスって、こんなに強引で大胆なことするんだと思ったけど、それはちょっと違うとすぐ考えを改めた。私が子供なだけなのだ。リードすることで私を少しでも安心させようとしてくれてるだけ。

「困ったな…かえって怖がらせてしまっているだろうか」

「い、いいよ、平気…」

「…。それは、了承の返事と捉えても?」

「き、気が、変わるかもしれないから…聞き返さないで…」

私がぎゅっと目を閉じた時、オプティマスの動作が一度止まったが、ゆっくりと唇が重ねられていく。キスって、こんなに柔らかくて温かいものなんだ。軽いリップ音の後少し離れて、もう一度繰り返される。

私の緊張をほぐすように、オプティマスと繋がっている方の手が握り直されて、私も無意識のうちに握り返していた。合間に薄く目を開けてみると、オプティマスと目線がかちあってドキリとする。同時に、彼は体を屈めて私を覆うように立っているから、なんだか申し訳なく思った。

「ごめんね…辛くない?」

「辛くはないが…ひどく背徳的に感じるな」

まあ実際人間の世界で言ったらほとんど犯罪だが…。

から笑いしたのは恐らくバレてるだろうが、オプティマスはそんな素振りなど見せずに再び唇を合わせて来た。今度は少しずつ、ジワジワと逃げ場を塞ぐようなキスで私の思考を溶かしていく。

いつの間にか片腕で腰を引かれて、体と体が隙間なく密着した状態になっていた。おかげですごく、熱い。吐息と共に互いの焦りと欲求が混ざって、先に進むことへの恐怖感が薄れていってしまう。

唇を割ってぬるりと舌が入り混んで来た時でさえ、私は大して抵抗感もなくすんなり受け入れていた。びっくりはしたけれど、熱に浮かされてどうでも良くなっていたという方が正しい。

思い切って自分の舌も一緒に差し出せば、うまく絡め取られてすっかりオプティマスのペースである。

くちゅり、ぴちゃり、なんて劣情を煽る音だろう。

「はあっ、ふ、んく…」

「ん、ナマエ…」

「ちゅっ…はあ、はっ、オプティマス…すごく、きもちいい」

オプティマスは眉を寄せて、気難しい顔をした。多分、私がまずいことを言ったんだと思う。キスだけでこんなこと言うなんて、なんて卑しい馬鹿女だろう、私は。

「ナマエ、すまない。先に謝っておく」

「な、えっ、んむ」

性急に口内を弄られて、思考が追いつかない。手を握っていた方の彼の手が後頭部を抑えて、もう片方の腕はしっかり体に巻きついているので離れられる余地がない。オプティマスの逞しい腕を私なんかで引き剥がせるはずもなく、一方的なキスをただ受け止めることしかできなかった。体は仰け反って、腹部が疼く。ただの、キスなのに。

「はあっ、あっ、ふう、く…ま、…オプティマス、っ」

「ふ…っ、はっ、まだ、もう少し」

「あ、や、苦し…んん」

時間の感覚がさっぱりなかったので、最後の長い口づけの後にやっと解放された時には一体どれだけ時計の針が進んでいるのかなんて考えもしなかった。体はほとんどオプティマスに支えられていたのだと思う。
怠くて力が入らず、とてもじゃないが立っていられない。

「は、はあっ、はーっ、頭、ボーッとする…」

「想像していたより、君は…ずっと、可愛いな」

「それって元が可愛くないってことじゃ…」

「いや、私の想像力が乏しいだけだ」

「なんかそれもちょっと違うような」

「それにしても…サムに勧められたドラマの中から見様見真似で再現したのだが、上手くいかないものだな。結局は自分の欲を君に押し付ける形になってしまった」

「それもあまり聞きたくなかった事実なんだけど…オプティマスのそういう正直なところ好きだよ…」

「……。君からは、初めて聞いた」

「え?えーと、ああ、オプティマスのことが好きだって? 」

「そう何度も…随分とあっさり言うのだな、君は」

「なんだか、悩んでたことがどうでも良くなってきちゃって…。もっと勿体ぶってる方がよかった?」

「いや、私はもう随分待った。長く生きてる私でさえ、そう思うのだから間違いない。君が思っているよりも、私はもう、ずっと前から…」

また熱っぽい瞳で見つめられて、いい加減離れてしまいたかったがそれもできない。オプティマスはもう一度、私の唇に触れた。今度は受け身ではなく、できる限り恋人らしく、彼の首に腕を絡めた。


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はしばみ様よりリクエスト。
「擬人化でイチャコラ(R18可)」

※キスどまりの完成になってしまいましたが、できる限りイチャイチャさせてみました。
リクエスト、ありがとうございました。

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