プロローグ

オプティマスの呼びかけで集まったオートボット達の中に、彼女はいた。砂塵舞い上がるテキサスの大地に、鮮やかなグリーンのオートボットの肩からひょいと軽々飛び降り、我らがプライムを仰ぎ見て、眩しい太陽に目を細めた小さな少女のことである。

「オプティマス!」

燦々と輝く瞳はただ一心に、オプティマスへと注がれていた。少女が駆け寄ると、オプティマスは体をすくい上げて人差し指で彼女の肌を撫でた。その優しさといったら、まるで硝子玉でも扱っているかのようである。少女は笑って、離れていた時間を取り戻そうと金属の手に頬をすり寄せた。

「ユズ、無事でよかった」

「私のことなんてどうだっていいでしょう。問題があるのはあなたのことだよ、オプティマス。もっとちゃんと顔を見せて。心配で心配で、それに会いたかった。ねえ私のことはちゃんと見えている?どこか問題のある機能はない?具合が悪いなら治してあげる。だからなんでもいって、なんでもしてあげるから、ああオプティマス、オプティマス」

少女はオプティマスの身を案じているようであるが、彼よりも、どうかするとユズと呼ばれた彼女の方が致命的なネジが外れてしまっているのではないかと思われた。壊れた人形のように、何度もオプティマスの名を呼ぶのをやめないのだ。

「そのちっこいなりで、よくそんな大口叩いていられるもんだ。守ってやれば文句は言うわ、放っておけば勝手に飛び出すわ、まったく困ったお姫さんだ」

「クロスヘアーズ、その呼び方を今日限りにしないと頭を蹴飛ばすからね」

「おお怖い。お気に障ったのなら謝りますよ、お姫さん。…おっと」

みるみるうちに、少女のものである細い華奢な腕が変形を遂げて、彼女の顔の三つ分はあるかと思われる不釣り合いな大きな銃が現れた。剣のような刀身に鋭い牙が上へ下へと伸びて、棘を纏う彼女の心を具現化したような形をしている。

オプティマスの足元でそれを見たケイドも、他二名も目を見張った。自分たちの目に錯覚が、はたまた幻覚が映ったのかとも思ったが、変形する金属のエイリアンに囲まれているこの状況では異常が正常であることを強く認識させざるをえなかった。

「やめなさい、ユズ」

「もう我慢ならない!黙っててオプティマス、口の悪い欠陥車は屑鉄に還して廃棄と相場が決まってるでしょう」

「また始まった」

「『オプティマスの前ではおしとやかにしてる』と言っているのを聞いた気がするのだが、空耳だったようだ」

「もう、ドリフト、それは今言わなくていいよ!空気の読めない偽侍!」

「『オーケー、オーケー』『落ち着くんだ!』『笑顔の君が最高に可愛いよ』」

最後に、ラジオ音声がユズの心に響いてやっと重々しい銃口は元の少女の腕に戻っていた。軽やかに飛び上がり、当然のようにオプティマスの肩に乗ったその動作は、あまりに優雅で羽根を休める蝶を思わせた。

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