偽物03



★他とは別枠のお話です

★舌まで



押し流されそうになる快楽の波をいくら押し戻しても足らない。体がぞくぞく歓喜に震えて止めどなく零れる言葉ですらない音が唾液と共に流れ出る。何度かイッただろうことはわかっているけれど、それが何回起こったかということまで把握しているのはサウンドウェーブだけだ。

「ん、ん、ん、ふ、あっ、はあ、はっ、ひい…!」

「上も下も、涎だらけだな」

「み、ないで、みないで、あう、くっ…ない、っで」

「お前は見られた方が感じる」

「ちが…!んあ、んんん、は」

「すごいな…中がひくついているのが、よくわかる」

「ひ、広げないで!広げちゃだめえ!もうやだあ」

「…自分でもよく見てみろ、どうだ?」

サウンドウェーブはわたしの腰をつかんで高く上げて、見せつけるように指を出し入れしていた。なるべく目を向けないように必死だったが、あの指が自分の中を探り快感を与えていると思うと不思議な好奇心に打ち震えた。

ふと指が抜かれたと思ったら、わたしの分泌液でどろどろになったそれを無造作に舐めとり、今度は性器の割れ目に舌を這わせた。驚いて小さく悲鳴を上げたが、サウンドウェーブはやめなかった。

「ひゃああ!う、うそでしょ…やめ、それはだめ、だめ…そんな、んっああ!」

ずるずると啜るような音、ぴちゃりと水がはねたような音、紡がれるリズムが、触れられるのと同等の快感を促す。わたしの否定的な言葉なんかには聞く耳持たず、サウンドウェーブは続けた。

「いやあ!もう、も、やだ、きもちよくっ、ん、は、なりすぎちゃ…!ああ、あ、あん、あ!」

「はあ、っ…また軽く、イッたな。忙しない奴だ」

「だって、だってえ、うう、サウンドウェーブが」

「俺のせいか?お前の本性だろう。…そう悲しい顔をするな。俺は気に入っている」

「ふあ、!?い、やあ!舌、入れちゃ、そんなことしちゃ、だめえ!だめなの、っひああ!んぐ、かは、っ、は、はっ、あああ」

中にぬるりと生温かいものが侵入してきた。くにくにと狭い中を割って、未体験の感覚が恐ろしいほど神経を刺激する。苦しいのに、気持ちがいい。相反する感情が同調しておかしくなりそうだ。それが入っていると、想像するだけでも、蕩けそう。

「あああ、あっ、サウンドウェーブ、も、やめて、それ」

一度抜かれて、再び入り込んできたかと思えば、先ほどから嫌になるくらい寂しがっていた突起を巻き込んで刺激され、全身が仰け反った。敏感な一点をキュッと吸われて、ノイズだらけだった頭の中きら何もかもが吹き飛んでしまった。

「い、やあああ、あ!あ、あああ、あ」

脳天から割れるような電流が走り、視界がチカチカする。赤ん坊のように泣きながら、はしたなく開けっ放しの口には涙の味が混ざっていた。喘ぎ喘ぎ放心している私の上で、サウンドウェーブは自分の唾液と私のとでびしょ濡れになった唇を御構い無しに黒いスーツの袖で拭った。

「全く…とんでもない拷問を始めてしまったものだ」

彼が独り言を始めたので、私が付け加えた。

「サウンドウェーブが嫌なら、もう最後にしようよ…わざわざ無理なことお願いしたりしないから」

「……。」

「えっ、な、なに?その呆れ顔…」

「……いいや、忘れろ」

「え、ちょっと、ま、またするの?」

着衣のまま固い床の上での行為だったが、サウンドウェーブは私の額、頬、首へとキスをしながら上着のボタンをぷちりぷちりと一つずつ外し始めた。順序がまるで逆だと思う。

実を言うと、何度か同じ目的でサウンドウェーブと会うのは今日で4回目だけれど、それまで入れられたのは指だけだったし、脱ぐのは嫌だと一度言ってから彼は「わかった」と潔く手を離してやめてしまった。

「今日は抵抗しないのか?」

「だ、だって、迷惑かけてる…から」

「震えているが」

「平気…」

ほんの一瞬、サウンドウェーブはにたりと唇を歪めた。ああ、わかってる。少しずつ私は、この男に侵食されているのだと。頭で理解するのは簡単なのだ。外野からはきっと、なんと馬鹿な女だと言われるだろう。

この緊張感は恐怖か、興奮か、その答えを考えるのは今はやめにしたい。どうせ彼との時間が終わった後に、嫌というほど罪悪感が私に詰問するのだろうから。









◆没テキスト

「……、一人で戻れるか?」

「あ、うん…戻れるよ。…けど」

「なんだ?」

「まさかその格好でどこか行かないよね…?替えなよ。こっちは洗濯しといてあげるから」

サウンドウェーブが見たことのない妙な表情をしたので、私の方が呆気にとられた。これがさっきまであんな涼しい顔で卑猥な行為をしていた男と同一人物だろうか。私は不思議なことを言ったつもりもないのだが。

「馬鹿なのか鈍感なのかわからんな、お前は」

「サウンドウェーブは頭がよすぎて私にはついていけないよ…どういう意味なの?さっきっから」

答えないまま、彼は上着をあっさり私に寄越してこめかみにキスをしていなくなった。上着から感じる残り香と、未だに疼く全身が今も彼を名残惜しんでいることを認識した時、私はいつもの罪悪感に支配されて、しばらくそこから動けなかった。

こんなに辛いのは、彼がそばにいないからなのだろうか。

ああなんとも、恐ろしい考えだ。


……ちなみにその後、サウンドウェーブは何事もなかったかのようにメガトロン様の隣で会議に参加していたらしい。なんだかものすごく、複雑な気分である。




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