お互い様


逃げる体を引き戻されて、膣内に押し込まれた指の圧迫感に思わず眉を寄せる。痛いと悲鳴を上げたものの、すぐにそれは却下されて奥に爪をたてられた。

「ほんとに、痛いんです…っ!」

「そんなはずなかろう」

「…なにを怒ってるんですか?っ」

いく度と無く体を求められてきたため、慣れというものが恐ろしくなってきていたところだった。それにメガトロンの方も、当初に比べれば大分譲歩してくれる部分もあり、時にはユズの要求を飲んでくれることさえあった。

粗野に見えて、彼はずっと理性的であり、そして「扱い方」をよく心得ている。だから実は、こんなに乱暴に押し入ってくるなど滅多にないことであって、正直なところ驚きを隠せなかった。

何か理由があるはずだ。けれどそれが見当たらない。

「我が触れる前から、随分と慣らされているようだ」

「?、っひい!いた、あ!いたいっ、メガ、ろ、さま」

「先ほどまで、どこの誰に足を開いていた?さぞ楽しかったのだろうな、淫乱娘」

反論などできやしない。ほとんど言われた通りの状態であることは自覚していた。痛みを訴えていたそこは擦られ、乱され、拡げられ、すぐに快楽が支配して行く。

だが彼女は、隙をみて利き足を振り上げ、思い切りメガトロンの肩を蹴り飛ばした。勿論そんなことでダメージすら与えることはできないと承知しているが、それが目的でもなかった。彼はその双眼を細め、ユズを見下ろしていた。

普段であれば、主を足蹴にするなど言語道断である。ある意味賭けであったが、やっと言い分でも聞く気になってくれたらしい。

「自分だって、いつもオプティマス・プライムのことばっかり考えているじゃないですか。私なんかただの暇つぶし相手なのに、どうしてそこまで干渉するんです?都合のいい時に使えないのが許せないから、とか?ハッキリ言って迷惑…ってなに笑ってるんですか!真面目な話なのに!」

渾身の威圧を込めて睨みつけたが、効果といえば相手を楽しませただけのようだ。これでは一体どんな表情をしていれば良いのかわからない。ただし、何をいっても取り合ってもらえないであろうことだけは明白だった。

「いつもそうですよね。自分ばっかり余裕持って…、ああ、もうやだ、こんな女々しいこと言いたいわけじゃないのに」

「女ではないか」

「…それってこの状況にかけた下ネタですか?笑えません」

「いい加減認めて、嫉妬していると素直に言え」

「はい?私が!誰に!なんですって?」

ユズはメガトロンの首に腕を回してぐっと自身の体を寄せた。言葉とは全く裏腹の甘えた動作。額をその胸板に預け、ワンテンポ間を置き、意を決したらしく「正解を教えてあげます」と消え入りそうなボソボソとした声で話し始めた。

「ついさっきまで、ひとりでしてたんです。相手なんでいませんよ」

うまく顔を隠したため、恐らくメガトロンは今ユズがどんな表情をしているのか見えていないはずである。ただし、逆もまた然りだが。

「認めて素直に言ったらどうです?そういうの、やきもちっていうんですから」

上からはくつくつと、抑えぎみの笑い声。先ほどよりも、きゅっと体が密着する。メガトロンの腕がその小さな体を捕らえた為だ。体重が抱えられて、体制がずっと楽になる。

はたからみれば、恋仲のようにも見えるだろう。その関係を問いただす者などいないが。勿論、当人達さえも。
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