心配かけてごめんね



ユズという科学者は、時として実験台に自分を選ぶことがあるため、よくここまで生きていられるものだと感心することも少なくない。

ちょっとした用があり彼女を訪ねたが、その時はすでに意識が朦朧としており、ぐったりと床に倒れていた。

普段どう乗り切っているのかなどわからない。とにかく、ドレッドウィングは急いで駆け寄りその体を抱き起こしてやることくらいしか思い浮かばなかった。

「副作用みたい」

何を完成させたかは知らないが、ただそうとだけ呟いた。呆れて一瞬、言おうとした言葉を忘れてしまった。

「お前はいつもこうなのか?」

「いつも失敗してるみたいなこと…言わないでよ」

実際、メガトロンが信頼しているくらいだ。そんなことは思っていない。論点がずれている。

「今はどうでもいいことだ。…そうか、とにかく医者、…まあ医者か、ノックアウトに」

「!、いいっ!いいから…あまり動かさないで」

先日、同じ実験を行い、『ドクターストップ』をかけられたばかりであった。今回のことがバレればまた叱られる、と懸念しているようだが、そんな悠長なことを言っている場合ではないはずだ。いや、それほどまだ余裕があると考えるべきか。

だが眉をひそめ、だらりと腕を投げ出している様子だけでも、大丈夫そうだとは言い難い。頭痛がするらしく、頭を動かされるのを酷く嫌がった。
そのためドレッドウィングはジッと、彼女のわがままに付き合った。

「ふふ」

「何がおかしいんだ?」

「律儀だなあって、おもって。放り出しておいてくれてもいいんだよ?しばらく横になってれば治るから」

「…誰にでもというわけじゃない」

彼のメガトロンに対する忠誠心は、ユズも知っていた。根っから真面目な性格なのだろうと、そういう意味で言ったのだが、あまりいい気分ではないようである。

気難しい表情をして黙り込み、またしばらく時が流れる。
このままでは埒があかない。

「…とにかく、医者だ」

「!、よっ呼ばなくていいってば…うえっ」

「じゃあ呼ぶのはやめてやる」

直後、あまりに軽々と体が浮き上がり、驚きのあまり奇声を発してしまった。強い眩暈に見舞われ、やっと認識したのはどうやら両腕で抱きかかえられているということ。

これではまるでどこかの国のお姫様のようではないか。

「わわ、わかった、いく、いくから、自分で歩ける」

「いいから大人しく甘えておけ」

抗議するも彼は全く聞く気はなく、暴れれば暴れるほど意識が遠のいていくために、やっても無駄であるとすぐ諦めた。そしてせめて誰にも顔をみられないようにとドレッドウィングの方へ顔をうずめることにしたのだった。

それを彼は、体調が悪化したと考えたらしい。

「…俺が、代わってやれればいいんだが」

ぎこちなく、迷いながら、つぶやくような口調。
ユズはただ「ありがとう」と、全身の力をドレッドウィングに任せた。











「あんな格好でやってくるなんて…挙式でもあげるつもりかと思いましたよ」

「なんだそれは」

「どこでそんな言葉を…。ドレッドウィングは知らなくてもいいから」







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