プロローグ

一人足らない。そんなことは誰もがわかっていることだった。幹部が勢ぞろいしているのに、彼女だけ、足らないのだ。メガトロンはすらりとその場を見渡してから、「ユズはどうした」と一言。扉が開いたのは、その直後であった。

皆が目を見開かずにはいられない。ユズというのは、小さく、人間サイズで、いつでも踏みつぶせてしまいそうな背丈なのだ。
だが今目の前にいるのはどうだろう。ブラックアラクニアより少し小さなくらいであろうか、とてもあのユズとは思えない大きさの彼女が、そこに立っていた。

「ごめんなさい、遅くなりました。」

だが皆、そんなことはどうでもよくなっていた。

「あんたそんなにでかかったっシャ?」

「…実験に失敗したの。あまり見ないで」

「クク、ハハハ!こりゃあいい、笑えるな」

「スタースクリーム、それ以上、言ったら、頭、吹き飛ばすから」

自分でも痛いほどこの失敗を恥じているというのに、更に追求されるのはいくら彼女でも腹に据えかねるものがあった(特にスタースクリームが相手では)。今のユズの大きさであれば、スタースクリームを簡単に殴り飛ばすことも可能であろう。彼はすぐにグッと口をつぐんだ。

「あの、メガトロン様、この体にまだ慣れてなくて、歩くのも大変な状況なので…デスクワークにしていただけると大変有難いのですけど」

メガトロンの了承を得て、研究室へ戻ろうとフラフラ帰って行く彼女の姿に、皆釘付けにならずにはいられなかった。
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