アピアラインス








「ほら。」

「ん?」

「土産。」

「中身は?」

「ケーキとエクレア。」

「今食べる。」

よし、と意気込んで寝転がっていたソファから起き上がる。

今は午前2時。
かなり遅いような時間帯だが慣れてしまえば体が自然と覚える。
帰りが遅かったり早かったりするジョットの為、綱吉は自分で調整をして待っていた。

生憎長期休暇は1日中フリーなので、遅かったら昼寝をするなりで睡眠を取り、早かったらゲームをしてくつろいでいる。
長期休暇グッジョブ。




「はぁ、
お前よくこんな時間まで起きていられるな。」

「だって慣れたから。」

「本来の中学生はもう寝ている時間だぞ。」

「長い休みは無駄に過ごさないようにって先生言ってたし。」

ジョットが買ってきたタルトケーキを頬張りながら満足気な顔をする。

確かにこんな深夜2時まで起きているような生活は厳しいものだろう。
だが今は長期休暇、加えて同年代の人間はこんな時間ぐらい普通に起きていると思う。

そんな現役学生である綱吉の意見をジョットは隣に座りながら不思議そうに聞いていた。




「何だか楽しげだな。」

「何が?」

「夜更かしが。」

「そりゃぁ普通起きていない時間は感覚的にめずらしいからさ。
みんな起きてるもんでしょ。」

「いや、俺の子供時代はそんなゆるゆるじゃなかったから珍しくてな。」

「ジオは俺ぐらいになれば人生のサバイバル中でしょ。」

「妥当。」

イタリア出身で小さい頃から殺しだのマフィアだのを直で見てきた。
それから10年近く経って今に至る。

ボンゴレ創立者などと呼ばれているがそんなに価値があるものとは思えない。



「お前はどうする。」

「ん?」

「そこでエクレア頬張ってる平和的なお前に聞いているからな。」

「人殺しは嫌だけど時と場合によるからよくわかんない。」

「まぁ、それぐらいの温度ならいいだろ。」

「ふぁ…あ。
ごちそうさまでした。」

あくびをしながら背伸びをしている平和の象徴的な前の人物を半分呆れて半分感心した。
最強といわれるマフィアのボスを目の前に、この気楽な態度は許しがたい行為として扱われるが逆に和む。
この性格は直したくても直せない気難しい人格だから、まぁ仕方がない。



「というか俺をマフィアのボスということを理解していないだろ。」

「充分に知ってマス。」

「こんなに懐いて何がしたい。
気が変わればお前を殺すかもしれないぞ。」

「それは大丈夫。」

怠そうな体を立たせるところを見ると随分と眠いらしい。
すると隣にいた人物はジョットの膝の上に乗っかって全身の力を抜くとリラックスタイム。
ジョットの部下にこの光景を見せれば血の気が冷めてボスである自分ごと乱射するだろう。



「ジオ優しいから。」

「…………。」

率直に言うと答えになっていそうで答えになっていない。
いや、超直感で理解したと考えてもシンプルすぎて頭の上にハテナマークを浮かべそうになる。

何故、そう問うと代わりに寝息をたてる音が聞こえてきた。



「…食った後に寝たら太るぞ。」






Don't worry
(I won't betray your hope)


09,02/01
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