恒星を欲するならば惑星を固めよ






「ここ?」

「違う、もっと右だ。」

「んー…、ここ?」

「力が弱い。」


まったくぅ、と頬を膨らませながらガリガリと指をたてながらジオの髪を洗う。

只今、ジオと一緒に入浴中。

特に意味はないけど。
一緒に入ろう、と言ってもはいそうですねと簡単に頷いてくれる程ジオは優しくない。


しょうがないから最終手段。
代わりに俺がジオの髪の毛を洗うという契約で、やっと入浴タイム。






(はぁ、これなら1人で入ったほうが良かったような…)


何であんなにジオと入りたかったんだろう、そう思いながらため息を吐く。
1人で入ればこんな雑用…。






「人が恋しいんだろうな、それは。」

「ッな!?」




ジョットの唐突な反応にツナは驚いた。

何かよくしらないけど心を読まれた?!
いやいや、別にそんな…っていうか恋しいって何だ。
確かに俺は思春期ですけど!
青春してますけど!(これでも)






「あぁ、人が恋しいってのは、ただ単に“好き”とか“嫌い”という意味じゃなくて。
頼りになる相手や、構ってくれる大切な友人に会いたいと思う事等だからな。」



ジョットは人差し指をたてて説明する。
その説明にツナは眉間にしわを寄せながら頭の回転をフルに使って考えてみた。


……確かにジオの言っていることは間違っちゃいない。
俺だって獄寺君や山本、並盛やボンゴレの皆にファミリーの守護者達を信頼してる。
その人達に“会いたい”って思うのは自然で。

今でも会って話をしたり遊んだりして楽しみたい。






「へぇー、
じゃぁジオは恋しくなったりしないの?」


俺はジオの髪の毛を濯ぎながら尋ねた。

金色の糸に指を添えて。




「俺は…そうだな。
まぁ、新たな継承者が来るのを地道に待つことかな。
栄えるも滅びるも好きにせよとは言ったものの、ボンゴレの治安に問題はないか気になるからな。」

「また任務の話?
ジオって何世紀経ってもファミリーの事は気にするんだね。」

「そりゃ俺が始めたんだからな。
言い始めである俺が見守らなくてどうする。」

「それもそっか。」



泡が落ちていく。
血で汚れたその体さえも流れていく。
マフィアとはかっこよく言っても裏組織な事に変わりはない。





――‐‐…‥‥

「俺は…]世(デーチモ)としてちゃんと力になれるかな。」


泡を流し終わって湯槽に浸かった瞬間、俺はジオに問うかのようにして無意識にぼそりと言った。
あまり恥ずかしくて言えなかったけど、いい湯加減のおかげで口が弛んでしまう。




「いきなり何を言いだすと思えば…。」

「え、ぁ……いや。」

「…まだ、
ファミリーに入ることに抵抗があるのか?」

「いや!そーゆうわけじゃないんだけど…さ。」



絶対に人は傷つけたくない。


その信念が戦いの時に邪魔になるかもしれない。
それが、恐い。


攻撃は最大の防御、
大切な人を守るために俺は戦う。

そんなヒーロー染みた臭い台詞を突き通してきたつもりじゃないのに、周りの思い込みで俺は棚に上げられた。
それが、嫌だ。






「心配するな。」

「え…ぶっ!!」


顔面にいきなりお湯がかかる。
後々からジオが俺にかけたのだと理解した。






「お前は貧弱なうえに正義感が強いとも言えない。
おまけに守る相手は“人”ではなく、最優先に“自分の命”。
表に出さずとは言え自己中心的な考えは行動として表現されているぞ。」

「…………。」

「お前は、それでいい。」


他人の命までも背負うことはしなくていい、周りは周りで何とかする。
ジョットは湯槽の縁に腕を組み、顎を乗せてずいぶんとリラックスした状態で話す。

俺は静かにジオの隣にもたれかかった。
すると自分より大きい手が俺の髪をくしゃくしゃと掻き上げる。





「まぁ、俺がああだこうだ言っても仕方がない。
後はお前の好きにしろ。
ボンゴレ]世(Decimo)」





My family is the Best!
(全てを包容する大空)
(守るべきものは人より信頼できる守護者の輪)



08,09/20
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