金色と象牙の温度差






「ジオ…何で窓を開けて寝るの?」

「ん…?」

急に呼ばれて目蓋を開ければパチクリと目が合った。

同じ寝室で寝ているツナと俺。
もうすぐ朝日が昇るであろう時間帯に声をかけられるなんて初めてだった。
どうやら、中央にある窓が少しだけ開いてあったことに疑問があるらしい。




「早いじゃないか…って本当に早いな。
まだ4時だぞ。」

「だって寝れないんだもん。」

「……………。」

「でね、何かやけに生温い微風が恐いんだよ。」

寝呆けているのか、目がうるうるしているツナを目の前に、ある意味で寒い空気が背中をなぞった。
こういう感覚を理性、と呼ぶのだな。

けれど、今はやめておく。


別に窓を開けて寝ることに意味はない。
ただ単に、外の音や新鮮な風のにおいが心地よいだけ。
…という説明をしてもツナには通じないだろうと思った俺は一言。




「寝やすいから‥とでも言っておこうか。」

「じゃぁ開けといたほうがいいよね。」

「でもお前さっき寒いって…、」

と言い終わらないうちにツナが俺のベッドに、もぞもぞと入ってくる。
ぷはっと顔をひょっこりと出せば俺と目が合った。
そしてちょいちょいと俺の袖を掴む。




「…何だ。」

「腕枕。」

へへっと笑うツナを前に、押し倒したい気持ちと叫びたい気持ちをなんとか押さえる。
無防備すぎるツナを目の当たりにし、必死に理性を保させている自分がいた。

俺は少し躊躇しながらも右腕を差し出しす。
ここで腕を差し出さなかったら、きっと機嫌を悪くして後の世話が大変だからな。




「ありがと、ジオ。」

俺の心情を知らずにツナはいそいそと左腕に頭をのせて寝る体勢をとる。

単刀直入、マズイ。
これでは俺が寝れない。
しまった、と思ってももう遅い。
既に隣で寝息がたっていた。

後から気が付いたが、コイツは以外に策略家か?
このままの状態でいれば、寝返りも出来ない。
しかも朝はツナより早く起き、静かに部屋を出て支度をする予定だ。
こんな接触している状態で起きれば、ツナも起こしてしまう。

コイツは朝、俺がいないと何故だか夜に甘えてきたりする。
そんなヤツが朝、同時刻に起きれば何をされるか定かではない。
ツナ、お前は程度というものを考えてくれ。
本当に甘えが過ぎると、こちらも我慢が出来ない。




「……さて。」

どうしてくれよう。

まずは右腕をそっと引いて体を左に向かわせる。
ツナとは反対の方向へ寝返りをうつ態勢にしようと考えた。
そして静かに腕を引き、俺の手がツナの頭に触れようとした、その時。




「………ん…。」

俺はすかさず腕を元に戻す。

危ない危ない。
下手をすればツナを起こす羽目になっていた。




しかし困った。

左がダメなら右に体を動かして寝返りをうとう、とするが。
よく考えればツナに覆いかぶさる状態になるのだ。
さぁ、どうする俺。




「………………。」

「‥スー‥スー……。」

「………まったく、」

結局、
俺は理性が崩れる覚悟で右に寝返りをうった。
もちろん、ツナは俺の腕の中にある。

しかし俺の気配に気付いたのか、ツナは腕の中でくぐもった声をあげた。
しかし眠気に負けているので、今の状況を理解していない。
目蓋は半分まで開けているがたまらなく眠そうだ。




「どうした。」

「う…うん‥‥。」

「そうか。」

俺が返事をした頃には寝息が聞こえてきて。
いつのまにか俺もツナに合わせて寝息をたてていた。




Good night,my family..
(やっと寝れる…)



08.06.28
戻る
リゼ