嗚呼…何て愚かな事だろう…

よりにもよってこんな日に…

いつもながら?
否、それ以上だ。

何だって俺は素直になれないのだろうか…

俺の馬鹿!!




意地悪な幸せ





今日は何日?

12月4日。

明日は何の日?

俺の誕生日。

目の前の人は?

…恋人の枢木スザク。

何故ご立腹なの?

っ、俺が聞きたい!!!!

「何だって貴様はそんなに怒ってるんだ!!!?」




,「何って…それは自分の胸に聞いてみなよ」

顔は笑顔なのに背後から何か黒いオーラを放っているのが悍ましい。

「何で君はそうやって誰にでも愛想を振り撒くのかな?
だから調子に乗った輩が君にちょっかいをかけるんじゃないか!!」

「な!?愛想振り撒いてなんか…」

「無自覚なのだから余計性質悪いよ…
それを僕がどんな気持ちで見てたか…!」

「っ!?知らん!!
もうスザクの事など知らん、嫌いだッ!!!」

「ルルーシュ!!」

スザクから逃げる様にしてその場から全速力で走った。




,

「っはぁ、はぁ…っ…?」

アイツの事だから追い掛けてくるかと思い、後ろを向いたが、そこには誰も居なかった。

「な、んで…?」

答えは簡単。

スザクに嫌いと吐き捨て、逃げてきたから。

(嗚呼、何て俺は馬鹿なんだ…!)

本当は心配されて嬉しかったのに、つい照れ隠しで強きになり、墓穴を掘ってしまう。

「…御免、スザク…!!」

心から謝罪を口にし、心身疲れ、重くなった体を引きずる様にして、クラブハウスへと足を運んだ。




,
やっとの思いで部屋に着くと、ベッドに倒れ込んだ。

幸い此処には俺以外誰もいなかった。

「うぅっ…」

それに安心したのか、涙が溢れてきた。

「スザ、く…!」

それは愛しき人の名

「スザク…!!」

呼べば呼ぶ程苦しくなる。

もう追って来てはくれないのだろうか。

ずっと俺の事だけ考えていると思っていたのは俺の自惚れなのだろうか。

そう思うだけでまた目尻から涙が溢れた。




,
もうどれ程時間が経っただろうか。

あんなに晴れ上がっていた空も、今は闇に包まれた様に真っ暗だ。

涙は漸く止まり始め、落ち着きを取り戻した頃だった。

(スザク…)

頭に浮かぶのはスザクの笑顔と俺を呼ぶ声。

「スザク、スザク、スザク…」
意思とは別に、自然と唇から出るその名。

「ごめんなさい…」

そして謝罪と

「愛してる」

ガコンッ

「!??」

いきなり窓が開き、腕がニュッと延びてきた。

その腕の本人は…




,
「す、すすすスザク!!!??お前まさか全部聞いて…」

「うん、ルルーシュ!」

ギュッと思いきり強く抱き締められた。

その暖かい温もりと匂いに、羞恥も忘れてまた涙が溢れてきた。

「ふ…ぅ…」

「あ、また泣いちゃったの?泣き虫だなぁルルーシュは」

「うる…さい…!!」

なんでコイツはこうムードに欠けることを言うのだろうか。

(でも…)

ちゅっ…

スザクの唇にキスをすると、彼は驚きつつもそれを嬉しそうに受け入れ、より一層深いものにしていった。
(幸せだ…)

そう感じた。

スザクの舌を喜んで受け入れ、その甘い感覚に暫く浸っていた。




漸く唇を離した後、スザクの口から嬉しい言葉を聞いた。

「誕生日おめでとう」

気が付けば日時は変わり、5日となっていた。

「生まれてきてくれてありがとう」

「…ああ」

「これからも愛してるよ」

「…ああ」

「だから今から襲ってもいい?」

「ああ……て、は?」

今コイツ何て言った?

何故服を脱がす必要があるんだ?

「嫌いって言われて僕本当に傷付いたんだよね」

「それは謝ったじゃないか!?」

「それに他の奴らに愛想振り撒く件…この罪は重いよ、ルルーシュ」

「な!?今日は俺の誕生日だぞ!?」

「だから?君に拒否権なんてないよ。365日、君は僕のものなんだから」

「だから何…ひゃあぁん!!」

俺の叫びはスザクに届く事なく、甘い響きへ変わってしまった。


(好きだ馬鹿っ!!)




END




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2008年ルルーシュ誕
リゼ