〜愛鳥週間〜
(Case1.朔波)
上田城の屋根の上。
野鳥に餌をやるようになって暫く経つ。
いつの間にか示し合わせたかのように朔波が居る事にも慣れた。
狐面をつけた変人が鳥と戯れる…
そんな穏やかで珍妙な光景を眺める俺。
ふと、今日の暦を考えてあの言葉が頭をよぎった。
「そーいや、今愛鳥週間だな」
『あぁ、そうだネ』
…返ってきた言葉は案外呆気なかった。
意外だな。コイツならもっと…
「便乗するかと思った」
『ハァ?バカじゃないの才蔵。愛鳥週間なんて普段この子達に触れ合わない奴らがすることデショ。普段から目一杯愛情注いでる僕に今更そんなもの必要ないヨ』
「…あ、そ」
まぁ、それもそうか。
朔波にとっちゃそれが日常だもんな。
『…まぁ、でも愛鳥週間だしねェ。ちょっと規模を広げて見るのもイイかもね』
「、あ?」
おもむろに指を唇に添えた朔波。
『ピィイイ―――――――』
次に聞こえたのは唇から零れた細く高い音。………と、
バサバサバサッ
大量の羽音。
東の空が黒い群れで埋め尽くされる。
「どわっ!?な、なんだあれっ!?」
『やぁ、皆よく来たネ』
「うっわぁ…」
黒い群れは徐々に上田城の屋根に向かって近づいてきた。そしてそこら一帯が黒い群れ、もとい朔波が呼んだんだろう鳥で埋め尽くされた。
…動くに動けねぇ。
ニコニコ笑ってる場合じゃねぇだろこのバカ狐。いや、顔は見えねえけど。
『今日も可愛いネ、キミたちは』
「言ってる場合か!可愛い通り越してこんなにいたら気色悪いだろーが!つーかどんだけ集めてんだよ!!」
『気色悪い?シバくぞテメェ。大体、愛鳥週間…なんデショ?』
思わず顔がひきつるのがわかった。
(きゃあぁっ!何これぇ!?)
(何事ですか!?)
(これはまた…面妖な…)
(あらあら…)
(鳥、たくさん…!)
(佐助!目を輝かせてる場合でござらん!)
遠くから見知った声がたくさん聞こえてくる。あぁもう、謝るからよ、
「この状況、どうにかしてくれ!!」
愛鳥週間?
コイツにんなもん関係ねェよ