スケボー








下校。

僕はいつもどおり、学校が終わるとすぐに下校する。

塾の時間が迫っている。

数学専門の塾で、講師はすごくクールだ。

僕はこの斜面を登り切ってからバス停に行き、少しの時間を数学の問題に費やすんだ。

まずは、この坂道を登り切るんだ。

地面から視線をあげると、同じ中学の制服のスカートがあった。

この地域では珍しいエンジ色の制服は、ちょっと暑苦しい。

律動的に動くふくらはぎは、藤井さんだ。

藤井さんは、学力試験ではいつも三本の指に入るし、顔も綺麗でスタイルもいい。

ちょっとイイなと思うけど、話しかけるのは怖い。

藤井さんが怖いんじゃなくて、そのバカなとりまきが怖いんだ。

恐ろしいっていうんじゃなくて、すごくうざい。

消えてなくなればいいと思う、くだらない取り巻き。

今目の前に動くふくらはぎは、1対で。

藤井さんだけが静かに斜面を登っている。

道路の対向車線の向こう側に、広くとられた歩行者優先道路を今風の服装の男が、スケボーで下っていく。

ガガガガガッ

大きな音をたてて、スケボーは飛んだ。

僕は思わず見惚れてしまった。

ダブダブな服装がカッコイイし、そのダランとした雰囲気でジャンプとか、なんか羨ましいと思った。

僕みたいなガリ勉は、こういうオシャレでかっこいい雰囲気は無縁なんだろうと思う。

10メートル程前で、藤井さんが立ち止まった。

彼女は振り向いて、その綺麗な瞳に、僕は立ち止まってしまった。

僕の気持ちに気づいたの?

どきどきどきどき・・・・

あれ、僕を見てるんじゃないね。

何を見てるの?

僕も振り向いて斜面の下を見おろす。

交通量の多い交差点。

スケボー君が、ガガガガと滑り降りる。



信号が赤だけど?

ヤバイ、止まれるのか?

スケボー君が交差点に差し掛かった頃、交差点が青になった。

「っち・・」

ん?

何、今の音。

え、舌打ち?

え、誰の舌打ち?

藤井さん・・・?

少し上の藤井さんは、退屈そうにスケボー少年を一瞥すると、また坂道を登りはじめた。

僕は、女がわからなくなった。


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あきゅろす。
リゼ