シュガーレスガールの甘み


綺麗な銀紙にくるまれてキラキラと宝石のように光るそれは、無造作にテーブルの上に散りばめられていた。
彼の手を覆っている革の手袋も今は傍らに置かれ、晒された長い指がひとつそれをつまむ。
きらびやかな包みを開けば、あらわれたのは貴方の大好きなチョコレート。流れる動作で口へと運ぶと、微かに口元を綻ばせた。

「クロームも食べたいですか?」

じっと見つめていた私を勘違いしたのか、尋ねられた。

「! えっと、はい」

本当は彼の珍しい表情に気をとられていたのだけど…。なかば反射的に答えてしまった。
どれがいいですかねぇと、繊細な指先がテーブルの上をさ迷い、いくつかある色の中から金色のものを選び出した。
男の人にしては細いそれが、丁寧に金色の包装をはがしていく。
その仕草に見とれていると。「どうぞ」といって、私の口元にチョコを差し出された。

「あっ自分で…」

そう言いかけたけれど、もう一度どうぞと言われれば、私に選択肢はない。
上目づかいに見上げたら、にっこりと綺麗に微笑まれてしまった。(彼の笑みには有無を言わせない魅力がある。…確信犯だ。)
鼻先をくすぐるカカオの香りに覚悟を決めて、指の先ごとぱくっとチョコに噛みつけば、口の中の体温にやがてゆっくりととろけだす。
途端に予想外の味が舌を襲った。

「…!!!っに…がい」

広がるのは高級チョコレート店に相応しい甘美なものではなかった。かわりに刺激してくるのは渋みを存分に含んだもので、あまりの苦さに思わず顔が歪む。

「うう、苦いよぉ」

「カカオ90%ですからね」

一般的なビターチョコのカカオの含有率は40%〜60%。それよりも上ということになる。
クフフと本性を現した悪戯な笑みを浮かべて、食べたいといったのはクロームですよ?
なんて言ってのける彼に頬を膨らませて、不満を訴えてみるけどその笑みを深くさせる一方でまるで効果がなかった。
…面白くない。というか悔しい。
涙目で睨みつけてから、彼のネクタイをぐいっと引き寄せてその勢いのまま唇を重ねた。舌先に残る苦みを押し付けるように絡ませる。
普段の私からは考えられない大胆な行為にされるがままになっていた彼は、何度か目をしばたたかせた後、微かに眉を寄せた。

「…これは確かに苦いですね」

口移しに伝わった味に、仕返しされた彼は苦笑した。顔が真っ赤なのが多少格好がつかないけど、私だっていつもやられっぱなしじゃないんだから。

「では、」

くいっと顎を持ち上げられて、彼の瞳と目が合えば、ルビーとサファイアが妖しい光にキラリと輝いた。

「もう一口頂きましょうか。」

「!?」



       の



ああ、やっぱり彼には勝てない。











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バレンタインは今更だったんで
チョコねたをやってみた。
動作描写ばっかりで申し訳ない。

途中髑骸と見せかけてやっぱり骸髑が好き←
ところでベロチューはR指定でしょうか?←



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リゼ