嘘つきは林檎を貪る
今日も僕は、嘘をつく。
他愛のない挨拶をかわし、それらしく行動し、あまり目立たぬよう、しかし印象に残るように。
「知ってるかい?ジョジョってな、エリナと付き合ってるのに、他にも女がいるんだぜ」
「ダニーが従順な犬だって?とんでもない、僕はあいつに噛まれそうになったんだ」
確実に、ジョジョを独りにするために。心がスカスカの不味い乾燥した林檎のようにするために。
たまには無理矢理唇を奪い、鉄拳による報復も受けた。
それでも僕は、目の前にある近くて遠い、甘い果実に食らいつく。
牙を剥いて、爪を突き立て、蜜が零れるのを見続ける。
最期には、歯形が残った残骸が捨てられるだろう。
そうすれば、僕はもっと大きな果実に食らいつける。目の前のカスがちっぽけな蟻に見えてしまうほど大きな、甘い果実に。

今日も僕は嘘をつく。いつか手にする果実のために。
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リゼ