裏の世界

「…むー…」

学校も終わり、特にやることもなく、公園で休む事にした。

子供がちらほら居る。
なんと言うか、平和だ。


「…ん?」


たたたたたッ!と一人の少女が目の前を過ぎる。
そして、べしょっ!という効果音がピッタリなほど派手に転んだ。


「大丈夫…?」


しゃがみ込んで女の子と視線を合わせる。


「ううっ…」


膝に痛みがあるのか、顔を歪めている女の子──茜ちゃんだ。

茜ちゃんの右膝からは血が出ていた。


「立てる?」


ふるふると首を振る茜ちゃんを抱えて水道まで行き、靴と靴下を脱がせて、傷口についた土を洗い流す。
綺麗にしたら近くのベンチに座らせて足の水気をとり、バッグのポーチから消毒液と絆創膏を取り出す。…ほら、俺の周り危ない人だらけだからちょっとした救急箱的なのは…ね…。


「染みるかもしれないけど、すぐ終わるから我慢ね?」


「うん」


傷口に消毒液をかけると、身体をビクリと震わせたが大人しくしていてくれた。


「はい、お終い」


絆創膏を貼り、靴下と靴を履かせる。


「お兄ちゃんありがとう!」


「…んー、まぁ…、お姉ちゃんなんだけどね」


「えっ…ゴメンナサイ」


「良いよ。好きなほうで」


なんとなく他愛のない話をしていたら、いつの間にか背後に誰かが立っていた。


「あ。赤林のおじさん」


「!?」


気配なんて、まったく無かった。


「や、お嬢。…こちらの兄ちゃんは?」


「お姉ちゃんなんだよ!」


「ありゃ、嬢ちゃんだったか」


「どーも」


「いやいや、済まないね」


「いえ…」


「怪我したのを手当てしてくれたの!」


「へぇ、大丈夫だったかい?」


「うん!」


「そうかい、嬢ちゃんもありがとうね」


「いーえ、当たり前の事をしただけですよー」


「ははっ、今時珍しいねぇ」


「この街はそんなに冷たいですか?」


「いや、嬢ちゃんのお陰でまた温かく感じたよ。
…そーいや、お嬢。そろそろ帰らないと親御さんが心配するんじゃないかい?」


「あ。忘れてた!」


「じゃあ送ってくから、嬢ちゃんまたね」


「お姉ちゃんありがとね!」


「おぅ、もう転ばないようにね」


「うん!」


派手なスーツの赤林さんが、まだ幼い茜ちゃんを連れているのはちょっと誘拐に見えなくもないが…、まだ純粋な茜ちゃんには関係ないかな。

赤林さん、なんだかんだコッチの人には優しいからね。







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リゼ