池袋最強
夕方、アイスが食べたくなってコンビニに行った帰りに、凄いモノをみた。
人が、飛んでる。
公園で静雄が暴れているらしい。
夕方だけど、幸い子供とかは居なかった。居るのは柄の悪い、静雄に突掛かって来た奴等と、俺みたいな野次馬だけ。
それにしても、圧倒的だなぁ。
普通は、女の子らしく怖がったほうがいいのかな?
でも、怖くないし。
自分が静雄を敵に回したとしても、静雄になら壊されても問題ない。静雄が優しい事知ってるから。
──つーか、カッコいい……。
殴る、投げる、蹴る、ブッ飛ばす。
殴られる、飛ばされる、悲鳴をあげる、逃げる、逃げられない、気絶。
少し怪我する、気にしない、殴る。
僅かに傷付ける、自惚れる、殴られる。
静雄が怪我するのはヤダけど、圧倒的強さは"恐怖"よりも遥かに"色気"がある。
…ムカつくなぁ、あの馬鹿共…。
静雄を怒らせるなんて。
静雄に力を使わせるなんて。
静雄が傷付くなんて。
あんな奴等、皆やられちゃえば良いんだ。
所詮、逆恨みなんだから。…違かったらゴメン。
そうこうしている内に、俺はアイスを食べ終わり、静雄の怒りもターゲットが居なくなった事で収まったらしい。
「お疲れ様ー、大丈夫?」
「あ゛? …るんっ!?」
「ん?どした?」
「いや、…その。見てたのか…?」
「うん」
頷くと、静雄は困ったように表情を歪ませた。
「…見ちゃマズかった?」
「…そりゃあ、お前には怖がられたくねぇし…。怪我も、しちまったし…さ。お前、血とか苦手なんだろ?」
「…吸血鬼じゃないもん。血は好きじゃないよ」
「だよなぁ」
くっくっと笑いながら、俺の頭を撫でまわす。
「さて、帰っか」
「うぃ!」
「夕飯なに?」
「春野菜のシチューだよ〜」
「お、楽しみだな」
「頑張ってつくる!」
平和島静雄が怖いだなんて、嘘。
平和で静かな優しい人。
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