悪戯っ子達(武人と妖魔)
キィキィ奇声を発している触手の頭を撫でればもう一匹が「ズルイ」と言わんばかりに視界に入り込んでくる。
そのもう一匹の頭を撫でてやれば満足したのか二匹でじゃれあう。
異形のモノとはいえ見ていて和んでしまう。

「わしには?」
触手の主の一言にガブラスはハッとし微かに緩んだ頬を引き締める。
「本気で言っているのか?」
「本気だ。」
表情ひとつ変えずに答える彼女に溜め息をつく。
性別不明という事らしいが見た目は女性にしか見えない。
本人はそんな些細な事を気にするようなタイプではないが。
そう些細な事は気にしないのだ。
諦めた風にもう一度溜め息をつき、妖魔の頭に手を伸ばす。
触手の表面とは異なるフワッとした髪を触手と同じ様に撫でる。
「満足したか?」

頷けば男はわしの頭から手を離した。
わしの頭を撫でた目の前の男、ガブラス。
これは面白い男だ。
ただの朴念仁かと思えばそうでもないらしい。
厳しい部分ばかりが目立つがある程度の事には寛大な所もあり、触手の悪戯に本気で怒る事もない。
だから調子に乗った触手に好きにされているのだが。
身体に絡みついてくる触手を振り払う素振もみせない。
擦り寄ってくる触手を見る目は優しく、つい悪戯をしたくなってしまう。

触手をあやすガブラスを見て雲はニヤリと笑みを浮かべた。
胴に腕を回せばガブラスは逃げ腰になる。
しかし触手が絡み付いて逃げる事が出来ない。
「なっ。」
困惑するガブラスを尻目に雲は更に身体を密着させる。
「。」
そう言えば諦めたかのような深い溜め息が聞こえた。
空いた片手で背中をあやすように撫で始める。
本当に面白い男じゃと雲は目を細めるのだった。
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