構って欲しいんです(幻想×武人)
「ジェクト。」
後ろから抱き付いて離れない男の名を呼んでみる。
しかし肩に顔を埋めたまま返事もせず腰に回した手に力を込めるだけだった。
いつの間にかこうなっていた。
武器の手入れに夢中でいつ来たのかすら知らない。
手入れが終わり気付いたらこのような状況だった。
「ジェクト。」
今度は少し強い口調で呼ぶ。
「あ?なんだよ」
苛立った声が返ってくる。
「足を伸ばしたいから少し手を緩めろ。」
溜め息が出そうになるのを我慢して頼むと小さな舌打ちが聞こえた。
やっとあぐらを崩し足を伸ばす事が出来た。
しかしながら舌打ちしたいのはこっちだと内心思う。
いい歳の男がこれぐらいで拗ねるなどガブラスには想像出来なかった。

伸ばし終わったのを見るや否やまた拘束される。
ガブラスは溜め息を付き、自らの手を重ねる。
意識していなかった為、気付かなかっただけだが後ろから伝わってくるジェクトの温かな体温が心地いい。
ジェクトの身体を背もたれにして、骨太な指の触り心地を確めるよう弄る。
「誘ってんのか?」
ジェクトが耳元で囁く。
それがこそばゆく身を捩るろうとするががっちりと身体を固定されていて逃げられない。
「すまない。」
「なんだぁ?」
突然の謝罪にジェクトはすっとんきょうな声をあげる。
ジェクトが指を絡めてくるので受け入れ、己の指を絡める。
「構ってやらなかったからな。」
「へっ、もういいってことよ。」
「そういうわけには。」
「じゃあこのままこうさせろよ。」
ガブラスの肩に首を乗せる。
「そんな所にも惚れてんだけどな。」
「馬鹿か。」
うるせぇと頬に何度もキスを落とす男に惚れ込んでしまった自分も馬鹿なのだと思う。
後でこちらからキスしてやろう。
どんな反応をするか楽しみだ。
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