飲み友(武人と幻想)
静かな地獄に呑気な声が響き渡る。
「でさーうちのティーダが可愛くてなー。」
「…おい。」
「うちの息子は最高だよ。」
「おい、話を聞け。」
「あぁん?なんだ?」
「何故、俺が貴様の酒に付き合わねばならんのだ…。」
「まーまー固い事言うなって。どうのこうの言いつつ飲んでるじゃねぇか。」
ガブラスは図星を突かれ微かに赤くなった顔をぷいっと横に向ければ、上機嫌なジェクトに頭を掴まれ髪の毛をグシャグシャにされる。
「可愛いやつだなぁ。」
「なっ、可愛くなど…。」
照れて既に赤い顔を更に赤くする彼の様子が可愛くて髪を乱す手を強くした。
「もう止めてくれ…恥ずかしいだろ。」
「ははは、可愛いやつだ。ほれ、酒が無くなってるぞ!」
ガブラスの手の中にあるグラスに酒を注ぎながらジェクトは拗ねたような顔をし言った。
「お前とゴルベーザぐらいしかまともに話が通じねぇんだよ。」
「…?」
「こっち側のメンツ考えてみろよ…。酒なんか飲みながら話が出来るかよ。」
ほろ酔い気分には似合わないような溜息をつきながらグラスを傾ける。
「あぁ…。」
カオス側のメンバーの顔を浮かべてガブラスも思わず溜息が出る。
(俺もあいつらは無理だ…。)
地獄に引きこもっているガブラスには今のカオス側がどういう状況であるかはわからないが、話し相手がいればジェクトがわざわざここまで大量の酒瓶を抱えてやってくるわけがない。

「まーそういうこった。これからも付き合ってくれよ。」
ジェクトに勢いよくバシバシと背中を叩かれながら言われると「…俺も気分転換になるからかまわん。」っと答えた。
その返答に満足した酔っ払いはニカッと歳に見合わない笑顔で笑うとグラスの酒を飲み干した。
「さーて、もう一本開けるぞ!」
「まだ飲むのか…。」
「なんだ?ガブちゃんはもう飲めないのかよ。」
「余裕だ。見くびるな。」
「よしよし、今日は朝まで飲むぞ!」
- 3 -
[*前へ] [#次へ]
戻る
リゼ