記憶への干渉(武人と空賊)
普通の話を書こうとしたのにどうしてこうなった・・・。


細かな装飾が施された床に寝転がればひんやりとした感覚が身体に伝わってくる。
空は雲一つ無い晴天。
陽光が暖かく眠気を誘う。
「って寝たら駄目じゃん!」
閉じかけた瞳を開き自分で自分に突っ込みを入れる。
「貴様は何をしている・・・。」
溜め息混じりの口調でヴァンを見下ろすガブラスの身体が日差しを遮り影を落とした。
影になって然程見えないが不快そうに眉間の皺を寄せているんだと思う。

「記憶ってどうしたら戻るんだろうなぁ。」
本当に考えているのかと?疑問を持ちたくなるぐらい 呑気に大欠伸をするヴァンを見据えてガブラスは「記憶なんぞいらん。」と洩らした。
「記憶は絶対にあるほうがいいさ。」
「この世に絶対はない。思い出さない方が己の為になる事もある!」
半怒鳴るような形で吐き捨てた。
顔を背けたガブラスの表情は何かに堪えるようだったがヴァンがその真意を読み取ることはなかった。

「なぁ、俺の事を知ってるなら教えてくれよ。」
減るもんじゃないんだしと強請る。
しかしとりつく島もないガブラスの態度に口を尖らせた。
「本当はあんたも思い出して無いんじゃないの?」
そうだろ?っとヴァンは無邪気に笑ってガブラスを見た。

「そう思いたいのだったらそう思え。思い出せば多少なりとも後悔するだろう。・・・貴様があの事を思い出して私の前にどのような顔をして立つか楽しみだ。」
そう嘲笑した。
その笑は冷たく、先程までとは打って変わった様子にヴァンは背筋が凍るのを感じた。
ブルーグレーの瞳に見られているだけで命を奪われてしまうのではないかというほどだった。
どれぐらいの時間が経ったかわからない。
それは彼がバハムートから立ち去るまで続いたように思える。
一人残されたヴァンは冷や汗を拭い、蛇に睨まれた蛙ってこんな気分だったのかなぁとホッと一息ついた。
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