サクラサイタ(武人と大樹)
拍手文の続きのような話。


次元城に足を踏み入れれば一面の桜がガブラスを迎え入れてくれた。
「見事なものだ。」
あまりの優美な光景に感嘆の声を漏らす。
「よく来たな。」
光る魔方陣が表れれば磁場転換でエクスデスがワープしてきた。
心なしか声が嬉しそうに聞こえる。
現在の見た目はともかく元々は樹、春の訪れが嬉しいのかもしれない。
「ここまで綺麗に咲くものなのか。」
「ファファファ。」
自慢の桜を褒められ上機嫌だ。
愛おしそうに樹の幹に触れる。
まるで我が子を撫でるように。
「お前の手入れが良いのだろうな。これを見せたくて呼んだのか?」
ガブラスはエクスデスが手入れを欠かさず守っていたのを知っている。
桜だけでない花壇の近くで戦闘をすればミールストームが何処からか飛んでくることもあった。
それだけ大切にしてるのだ。
「うむ。真っ当な評価をする者に見せたかった。他の者は全く興味がないか、無駄な言葉を多く発する。」
「そこでジャッジマスターの私が選ばれたと。」
エクスデスの言葉に成程っと頷く。
混沌の者は花より団子、花より戦闘、花より輪廻。
そうでなければ派手好き、ズレた美的センスのウンチクを延々と語る者と曲者揃い。

「せっかく来たのだ。茶ぐらい飲んで行け。団子もある。」
ゆったりとした歩みで満開の桜に包まれた次元城の奥へと向かっていく。
「ふむ・・・有り難く頂こう。」
前を歩くエクスデスにはすぐ追い付いてしまった。
ガブラスはエクスデスの歩調に合わせゆっくりと歩く。
「先に行かぬのか?」
「ゆっくり花を愛でながら歩くのも悪くはない。」
ヒラヒラと舞い落ちる花弁を手で受け止める。
ファファファと笑う水色の鎧とピンクの桜。
よくよく見ればファンシーな光景だ。
そんな下らない事を思いつき、つい口元が緩んでしまうガブラス。
急ぎの用もない身。
のんびり花を愛でながら過ごすのもいいものだ。
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